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瞬く世界の真ん中で


太陽の光に照らされて、輝く笑顔が眩しくて。
しっとりと潤んだ瞳に、胸が跳ねた。


一面の銀世界。ぺたぺたと残った足跡を追えば、そこには幾つもの可愛い小さな雪だるま。目も鼻もない、ただ真っ白に積み上げられた球は、雪景色に溶けて消えてしまいそうに儚くて。
その傍で、揺れる真っ赤なコートに目印の麦わら帽子。
「ルフィ。」
呼ぶ白い声すら空気に混ざって、愛しい人を映した瞳が思わず細まった。
冷たい風に赤くなった鼻は、純白の背景のせいかクリームの上にちょこんと鎮座した苺のように見えて。桃色に色づいた頬は、いつも以上に柔らかそうで。
「ゾロ!」
嬉しそうに飛びついてきた身体を抱き留めれば、ぴとりと肌を押し当てた。

「きもちーな!」
とクスクス笑う唇にキスをして、
「この気温がか?それとも景色か?」
なんて尋ねれば、
「ゾロが!温かくて気持ちい!」
ふわりと開いた唇から、弾けるように白い息が漏れた。

その声が、表情が、愛おしくて。
雪に反射して眩しくて。

「そうだな。」
そう囁いて、誤魔化すように唇を重ねた。

ぷるんと潤んだ口元に、おやつに飲んだココアの香りが甘ったるくて。腰に回した腕に力が籠もる。ふるりと震える長い睫毛に誘われて、角度を変えて吸いつけば、とんとんと弱い力で肩を叩かれて。きらりと瞬く糸を切って、瞳を覗く。
「苦しかったか?」
と冷えた頬を撫でれば、ふるふると横に揺れる黒い髪。
「寒かった?」
先程より幾分、優しい声で尋ねれば、ぎゅうと身体がひっついて。

「ふたりきりが、いい。」
なんて、いつもとは違う甘えた声。
辺り一面の銀世界、周りに立つのは自分で作った雪だるまだけだと言うのに、それすら見られるのが許せないらしい。
「ベッドの上で、ゾロと、ふたりで、ぬくぬくしたい。」
すりすりと胸元に擦り寄せられる鼻に、白い額。

子供っぽい笑顔からは想像できぬ艶めいた声に心が揺れて、どうしようもなく恋しくなって。
「なら、帰って風呂に入ろうか。」
さらりとした髪を梳いて、額に唇を当てたまま、
「ふたりきりで。」
なんて、秘密話をするように囁いた。


甘い香りを纏った身体を抱き上げて、鼻先を合わせれば。
もう一度だけ、と雪だるまに見せつけつけるように、艶めく唇にキスをした。








2016.12.12
きらきら輝く世界の中でも、目に映るのは貴方だけ。









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