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ジャックの微笑み



暗闇にぼんやり浮かぶ笑った瞳。


橙色や紫に飾られた町中を歩けば、甘いお菓子の香りがふわり。
町中に貼られたポスターによれば、近々、秋の収穫祭が行われるらしい。仮装用の衣装やオーナメントが並ぶショーウインドウに映る、ふたりの姿が近づいて。
「ゾロ!見てみろ!」
と指さした先には、オレンジ色の大きなかぼちゃ。つり上がった目元にギザギザに切り込まれた口がどこか愛らしくて。
「中に火を入れるらしいな。」
軽く持ち上げたそれを見て呟いた言葉に、店員らしき男がにっこりと笑う。
「兄ちゃんたち、旅人だろ?安くしとくよ。」
きらきら輝く恋人の瞳に、買わないわけにはいかなくなって。酒瓶を買うはずの小遣いの一部がかぼちゃに変わる。

胸に抱えた大きなかぼちゃが気に入ったのか、ルフィの表情は明るくて、足取りも軽い。いつもなら迷いに迷って辿り着く船が、今日は導かれるようにすぐに見つかって。沈みかけた日に海の色が一層、濃さを増す。


夕食後、ふたり甲板へ出れば、今夜は月が陰に隠れて見えなくて。ちらちらと瞬く星がいつも以上に輝いた。
擦ったマッチから蝋燭に移した火が、ぼんやり、パンプキンマンの表情を浮かび上がらせて。ふたりの身体をぼんやり照らす。
「ブルックみたいな顔だ!」
なんて、ケタケタ笑う声に心が揺れて。温かな光の中、愛しい人を見つめれば、
「・・・綺麗だ。」
ぽろり、本音が零れた。


マストの陰に隠れて、唇を合わせて。
そっと脇腹に滑らされた熱い手を制すれば、
「いいだろ?」
なんて、低く甘い声で囁かれて。
ぴくりと肩が跳ねる。

「ゾロ、悪い奴だ。」
銀色の糸を引いた口元を拭って、額を合わせれば、揺らめく炎が瞳に反射して。
まるで視線が燃えているよう。

「でも、今からすることはイイコト、だろ?」
そう囁く表情が、にやりと笑った悪魔のようで。
「なぁ、ルフィ。」
名前を呼ぶ声は、柔らかな羽をもつ、まるで天使。

もう一度と重ねた唇に、ぱさりと衣服が落ちる音がして。静かに芝生にふたりの身体が傾いて。

地獄と天国の狭間、ランタンの光にぼんやり揺れた甘い陰が笑う。




そのからかうような表情は、
まるで、ジャック・オ・ランタン。









2016.10.02
騙されているのは、さて、どちら?
#ゾロル版深夜のお絵描き60分一本勝負「かぼちゃ」





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