背伸びした勘違い
優しく抱き締めた身体は温かくて
まだまだ子供のようだった。
冷たい夜に二人で布団を被って、そっと白い額に口付け。それが毎晩決まった、おやすみの合図。
まるで子供にするように、とんとんと背中を叩いて髪を撫でれば、普段ならうとうととし始める瞼が、ふわりと開いた。
「…ゾロ。」
小さく呟く声に、優しく首をかしげて
「眠れないか?」
と尋ねれば、何だか不服そうに形のよい眉に皺がよって、ぷくりと桃色の頬が膨らんだ。
どうしたんだ?と柔らかなほっぺに手を伸ばした瞬間に、回る視界と掴まれた胸ぐら、俺の身体に馬乗りになる可愛い恋人。
いまいち状況が解らず相手を見れば、何故だか潤んだ瞳が俺に落とされて…
「おれだって、もう子供じゃないんだからなっ…!」
なんて、相手から出てくるとは到底思えない言葉。
こんな格好で、こんな場所で。期待してしまってよいのだろうか?この、いつもはお気楽な船長さんに。
「…あぁ、そうだな。」
と動揺する気持ちを切り替えたくて、わざと甘ったるい声で囁けば、
「わかってないっ!」
と胸ぐらを引き寄せられて、勢い良くキスされて。
こんな冷たい月夜にベッドの上で、恋仲の大人がすることと言えば決まっている。甘い甘いキスに、蕩けるほどに熱い抱擁。ひとつに繋がる、ふたりの愛。
唇を触れさせながら、慎重に相手の寝間着を捲し上げて、そっとそっと細い腰を撫でた。これでいいのか?そう不安になりながら。
慣れない感覚に震える身体が愛しくて、大丈夫だと、更にお互いの距離を縮めれば、ふわりと唇が離されて。
「ゾロ、」
その先を遮って、少し強引にキスをした。
抵抗なんて、させない。
お前が求めたのだから。
お前が欲したんだから。
身体を反転させて、少し力を込めて細い手首をシーツに繋いで。ゆっくりと絡めた舌から伝わる熱に、我慢が効かなくて。
「抱いて、いいのか?」
そう、尋ねれば
「うん、ぎゅってして。」
なんて。
やっぱり子供じゃないかと、力が抜けて。
勘違いした自分とキョトンとするルフィに吹き出せば、
「愛してる。」
すき、より大人な言葉を贈った。
子供じゃないんだから、
きちんと唇におやすみのキスをして。
そうしたら、
たくさんたくさんハグしてあげる。
そう笑った恋人は、俺の胸の中で小さな小さな寝息を吐いた。
2012/12/12
/手を繋いだら恋人!なんて背伸びした勘違い。
*
[ 4/20 ][prev] [next]
Back