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ふたりのサンタと最後の手紙*




深々と頭を下げた先には、ふたりのサンタ・クロース。






「ゾロはサンタさんに、何をもらうんだ?」
そう尋ねる愛しい笑顔に、おれはハッとカレンダーに目をやった。

同棲してから、初めてのクリスマス・イブ。
街の雰囲気がふわりと優しいものに変わっているのは肌で感じていたが、まさかすっかりこの日を忘れていようとは。

「お前は何を?」
そう視線を合わせて尋ねれば
「ゾロなら、わかるだろ?」
なんて、白い歯を見せて幸せそうに返す恋人が愛しくて。


「クリスマスケーキを買ってくる。」
そう無理矢理、理由をつくって。
「おれも行きてェ!」
なんて頬を膨らませるルフィに部屋の飾りつけを任せ、家を出た。



毎日、楽しげに過ごすルフィが望む贈り物が思い浮かばなくて。
ショッピングモールのフロアを行ったり来たり。

アクセサリーや衣服はサンタには強請らないだろう。ゲームだって欲しがる様子は見られなかった。大好きな肉は、ほぼ毎日食卓に並ぶわけで。

店内に流れる明るい音楽に、愛らしいサンタ姿のテディーベア。


「こうなりゃ、最終手段、だな。」
そう呟いて、意を決せば、高級和牛とワインを手にレジに急いだ。






土産を手渡して、床に手を着けば、飽きれたような溜息が聞こえて。

「…ルフィへのプレゼントがわからなくて、おれたちに会いにきたと。」
机に頬杖をついた金髪がさらりと揺れれば
「で、これがそのための土産。」
包装紙越しに箱をトントンと叩くリズムにあわせて、黒い髪が跳ねた。

“最終手段”として選んだのは、先代サンタであるルフィの兄に会うことで。
床に額をつけて、訳を話せば、ふたりの義兄は顔を見合わせ、もう一度溜息を吐いた。

「確かに、おれたちはルフィのサンタだった。だから、今年も手紙を託された。」
「あいつは、おれたちをサンタ見習いだと思ってるからな。」
そう言って、差し出された小さく折りたたまれた紙に視線をやれば、


「さっさと帰れ。お前がいるのはここじゃない。」


そう、ルフィに似た、それでいて優しい兄の顔があって。





全速力で走って、自宅を目指した。
玄関の扉さえ億劫に感じるほど、相手の体温が恋しくて。
おかえりを聞く前に、ぎゅっと強く愛しい人を抱き締めた。

手に金色のモールを持ったままのルフィが、驚いたように
「…ゾロ?」
そう、小さく名前を呼んで。


泣きそうなほど幸せな時は、どんな顔をすればいいのだろう。
目の前の、小さな身体が愛しくて堪らない時は、どうすればいいのだろう。


「なんか、恐いことあったのか?」
なんて、髪を撫でてくる指が温かで、宥めるように首筋に触れた唇が柔らかで。




そのまま倒れこむように、ソファーに身体を傾けて、深い深いキスをした。







白い紙に踊る、いつものヘタクソな文字。
こどもっぽくて、愛らしくて、微笑ましい。
サンタに宛てた、一枚の手紙。






サンタさんへ

まいとし、プレゼント、ありがとう。
でもな、ことしは、もういいんだ。
だって、ほしいものはぜんぶあるから。
おれ、すごくしあわせなんだ。
だから、おれのぶんのプレゼントは、サボとエースにあげてください。

あと、

あとな、




ゾロにいっぱいしあわせをあげてください。












キラキラと輝く星屑に、遠くで鈴の音が聞こえた気がして。





「おれも、望むもんはもうねェよ。」


そう、低く熱い声でサンタに囁いた。
















2015.12.24
望むならば、君を。

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