チョコレートフォンデュ*
(大学生同棲)
大好きだと囁く声は
甘過ぎて…
湯煎したチョコレートを可愛い恋人に差し出せば、キラキラと瞳が輝いて。
「ゾロ、お菓子作んのも上手なんだなっ」
なんて、幸せそうな大切な人に、ただ溶かしただけの甘い個体を、差し出して。
「チョコレートフォンデュしよう!」
となんて思い付いたように呟いて。ふわふわとエプロンを揺らしながら駆け寄ってきた恋人を抱き留めて、白い額にキスすれば。大きなお鍋にたっぷりと詰められた板チョコが窮屈げに俺を見上げた。
「ここに、お水とお砂糖入れて、煮ればいいんだろ?」
なんて、にこにこ笑うルフィが愛しくて。俺は困って、熱い熱い溜め息を吐いた。
いくら、菓子作りの経験がないと言ったって、常識として「湯煎」ぐらいは俺だって知っている。
「チョコレートフォンデュ、俺も手伝おうか?」
それでも、この満面の笑みに文句なんて言えなくて。俺は鍋ごと、愛しい人を抱き締めた。
とろりと溶けたチョコレートに、細い指が伸びて。ペロリとそれを舐める唇が妙に赤く感じて。
「丁度いい感じだ!」
結局、俺が溶かしたチョコレートを見、ふわりと頬を染めて囁いたと思えば、小さな身体がひらりと椅子から降りて。冷蔵庫からガラスのフルーツボウルを取り出せば、
「おれと、ゾロ。」
とニッと笑った悪戯っぽい瞳と、真っ赤なイチゴに並んだ、みずみずしいキウイが俺の瞳に映った。
「ハッピー、バレンタイン!ゾロ!」
爪楊枝に刺さったキウイが、既に固まり始めたチョコレートを纏えば、
こんなの、俺には、甘過ぎる!
そう、笑って
甘い唇で
囁いた。
それでも、君の甘ったるさが愛おしい。
2013/02/14
/貴方の愛を焦がして、溶かせば。ほら、スイート・ビターなチョコレートフォンデュ!
*
[ 16/20 ][prev] [next]
Back