鬼道と円堂

大人鬼道さんと大人円堂くん。
捏造しかない。
無理な方は注意してください。
元ネタ→流線プリズム/鏡音リン・レンor巡音ルカ




さよなら、円堂。




今日、円堂に別れを告げた。
この関係への別れを。
それを円堂はあっさりと受け入れた。

『いつかこうなる日が来るのは分かってたぜ』

泣き笑いながら言った。
そんな円堂を抱きしめたかった。
だけどしなかった。
したら円堂は俺のことを吹っ切ることができないだろうし、俺自信も断ち切ることができないだろう。

『じゃあな、鬼道有人』
『ああ。さよならだ、円堂守』

最後まで円堂は笑っていた。
俺が大好きな顔で。

自宅へ帰ると、ありとあらゆる部屋が真っ黒だった。
そうか、父さんは今出張中でいないんだった。
自室へ戻り、そのままベッドへ飛び込んだ。
電気はなんとなくつけなかった。

総帥からもらったゴーグルは今や引き出しの中。視力がいつの間にか落ちていた(多分、視野が狭く、暗いゴーグルでずっとすごしていたからだ)ためゴーグルと入れ替えるようにちょっとばかし度がつよい眼鏡をかけたのは大学に進学するちょっと前だ。
それを壊れない程度にほうり投げ、腕で目元をおおった。

涙なんか出るわけない。
悲しいわけなんかない。

別れを告げたのは俺のほうだから。

だけれども、胸が痛いのはなぜか。
それは円堂のことが好きだからだ。

俺たちが一緒にいても何も始まらない。
鬼道家を継ぐ俺が男と付き合っている、なんて世間一般的にはありえない。
そんなことが知られてしまえば、父さんの名前に泥を塗るようだ。
と、円堂に言われたことがある。

そのときの俺は、まさしく円堂が総て。俺の世界は円堂を中心に回っていたのも当然だった(端から見れば馬鹿馬鹿しいが、今もその考えは変わらない)が。
しかし、だ。
歳を重ねるにつれ、円堂が言ったことが脳内で繰り返され、挙げ句の果てには『別れてほしい』というサインだったのでは? と思ってしまう。

真実なんか知りたくない。
それが純粋に思っていることなのか、
別れたいというサインなのか。
痛いのはすべて自分にくる。
故に聞かなかった。
聞くはずもないだろう?
自分が好きな相手に対して『別れたいのか?』なんて。

それになにより、孤児院にいた俺と春奈を引き取ってくれた父さんへ恩を仇で返すような真似は絶対にしたくない。

だから俺は……。

これでよかったのだろうか。
本当にこれで。
自分の将来のためだけに愛する人と別れを告げた。
相手もそれを察してくれた。

『ゆーと!』

愛おしい声が聞こえる。
俺を呼ぶ声。

何度、この部屋に招いただろうか。
何度、この目で円堂を見ただろうか。
何度、この腕で抱きしめただろうか。
何度、この唇でキスをしただろうか。


数え切れない思い出がプリズムみたいに乱反射し、俺を苦しめる。


いずれは、
消えていく思い出なら、
消えていく記憶なら、
俺の中に残さないでくれ……!
いっそのことすべてを消し去れたら楽なのに。

円堂守の笑顔。
円堂守の泣き顔。
円堂守の怒り顔。
円堂守の照れた顔。

すべてすべて、消してしまいたい。忘れてしまいたい。
すべてが零になればいい。
綺麗なまま壊してしまいたい。
だけれども、俺の身体は、心はそれを拒否した。
綺麗なまま終わらせたい。
思い出として閉まっておきたい。

忘れたくても、忘れられない――。

ポロリ、涙が一つ。
袖の布に吸収された。
今の俺は泣くことしかできないようだ。
自分から言っておきながら、このざまだ。なんと滑稽なことか。

もっと、一緒にいたかった。
もっと、時間を共有したかった。
もっと、愛したかった。

別れてしまったことに後悔してる、のか?
自分で言っておいて?

「ハッ……戯言だ」

などと自嘲してみた。
泣くくらいなら、そう思うくらいなら別れを告げなければよかった。
そうは思いたくないから、頼むから俺を後悔させないでくれ。
繋いでいた円堂との糸(くさり)を自ら手放したことに。

もう、総てを終わらせてくれ。
総てを消し去ってくれ。
俺が円堂守をアイシタ、という記憶も総て。
零になればいいのに――。




(記憶の彼方に消える想い出に)
(サヨナラを告げ、もう行こう)
(円堂守のいない世界へ)

――――――――――
きみのすきなうた様に提出しました。


夜の彼方で 乱反射する
プリズムに瞼を閉じて
記憶の彼方に消える 想い出に
サヨナラを告げて もう行きましょう

夜の果てで 揺れるプリズム流線を描いて消えた悲しい歌なら もう歌わない
繰り返しの歌 もう忘れて 全部終わらせて

ルカさんorリン・レンの流線プリズムです。
最近はまりすぎて無限ループ。
カラオケ配信おめでとう!!
ぜひ聞いてみてくださいね
最後になりましたが、企画参加させていただきありがとうございました!





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