「まさか、二度も同じ手にやられるとはね……」
「二度?」
そのカイザーの言葉に、私たちは大輔くんたちの方を遠くから見つめた。
「僕の作戦ミスだよ。君がいざとなったら周囲に目もくれず司令官に突っ込んで来る奴だってこと、忘れてた」
「どういう意味……!」
その言葉に、大輔くんの目線がカイザーの足元に移る。カイザーの右足は血が滲んでいた。その場所は、一乗寺くんが怪我したところと一致する。まさか――。ちらりと飛鳥くんの方を見つめる。飛鳥くんはカイザーを真っ直ぐ見据えていた。その真剣な表情からは、何も読み取れない。
「お前、その足の怪我……!」
大輔くんは信じたくないようで、首を横に振った。
「偶然だよな……」
「偶然じゃないよ、君の想像通りさ」
そう言うと、カイザーはサングラスを取った。髪型はボサボサでダサくて違えど、この無駄に端麗な顔は――。
「ま、まさか……一乗寺、賢……!?」
大輔くんは地面に座り込んだまま、呆然と呟いた。――そう。そこにいたのは、一乗寺くん……一乗寺賢だった。飛鳥くんといい、一乗寺くんといい、今日は一体どうなっているんだ。今までの冒険でも、こんな怒涛な展開はなかった。さすがの私も、頭の理解が追いつかない。
「今日のところは負けを認めてやろう。だがこれからは、本気で戦わせてもらうよ」
カイザーは呆然とする大輔くんを前に高笑いをして、去っていった。普段とえらいギャップの違いだな。一乗寺くんの高笑いとか、想像できないんだけど。
「お、俺……お前のこと尊敬してたんだぜ……。すごいやつだって……なのに……」
大輔くんは膝をついて、大声で叫んだ。
「なんでなんだよおおおおお!」
大輔くんの叫び声に混じって、Dターミナルの音が鳴る。飛鳥くんはポケットからDターミナルを取り出し、じっと見つめた。
「飛鳥くん……?」
「……賢から。『……飛鳥。覚えておけよ』だって」
飛鳥くんがパタンとDターミナルを閉じると、タケルくんが目の前に立った。
「……説明、してくれるんですよね」
タケルくんの言葉に、飛鳥くんは静かに頷いた。
「俺の知ってることは、全部話す」
飛鳥くんは力を込め、ロップモンを抱きしめた。ロップモンも真剣な表情をしている。
――私も知りたい。君たちが、何故ここにいるか。飛鳥くんたちも仲間なんだって。その話を聞きたい。