漆黒

 穴から脱出し、しばらく走っていると、大輔くんたちの姿が見えた。


「大輔くんたちよ!」

「ん、あれは……!?」

 大輔くんの元へ、デジモンが迫っていた。あのデジモンは、見たことがない。なんだ……?


「あれは、デルタモン! 今はカイザーの手下になってるの!」

「じゃ、じゃあ大輔くんが危ない!」

 私は慌ててD-3を取り出した。大輔くんは、誰にも傷つけさせないんだから……!


「ラブラモン!」

「はい!」

「私たちも!」

 私たちはD-3を掲げた。


『デジメンタルアーップ!』

「ラブラモン、アーマー進化! 誇り高き慈悲、ムースモン!」

「テイルモン、アーマー進化! 微笑みの光、ネフェルティモン!」

「アルマジモン、アーマー進化! 鋼の英知、ディグモン!」

 ネフェルティモンは、ホルスモンたちと一緒に空から飛んでいった。


「ディグモンは地下から潜って行ってください」

「わかったぎゃ」

「ムースモンも地上から走って向かって!」

「はい!」

 ディグモンとムースモンは、それぞれ別ルートで向かう。私たちもその後に続いた。



「大輔くん!」

「みんな!」

「僕たちは無事だよ!」

「良かった……って、うええ、飛鳥さん!?」

 私たちが駆け寄ると、一緒にいた飛鳥くんを見て、大輔くんは飛び退いた。


「こんにちは、大輔くん」

「こんにちは……って、えええ……?」

 大輔くんは考え込んだが、すぐに顔をあげ、にこやかに笑った。


「まあいいや!」

「いいの!?」

「それより、あれは……!」

 大輔くんが指をさした方を見ると、私たちが縄で吊るされていた。その後すぐに、バケモンへ変化する。む、無駄に完成度高いな……。


「バケモンが化けてたんだ!」

「馬鹿野郎! どうしてもう少し奴らを押さえておけなかったんだ!」

「ごめん、賢ちゃん……」

 カイザーがワームモンに怒鳴り声をあげる。ワームモンは縮こまって、カイザーに謝っていた。


「おっと、ワームモンを責めないでくれよ!」

「お、お前ら……!」

 カイザーは飛鳥くんたちを見ると、目を見開いた。……と思う、多分。あのダサいサングラスで見えないからわかんないけど。


「何でそこにいるんだ!?」

「もうあなたについていけないからだよ! カイザー!」

「大輔くんたちを、これ以上危険な目にあわせたくないんだ!」

「なに……!?」

 カイザーは飛鳥くんたちを睨んだ。飛鳥くんとロップモンも、力強くカイザーを見つめる。


「ふん、勝手にしろ。その代わり、これは貰っていくがな」

 カイザーはポケットから何かを探ると、鼻で笑った。あ、あれは……。


「もしかして、紋章……?」

「あれは、昔僕たちが持ってた……」

「でもあの色は……」

 紋章らしきものは、黒ずんで禍々しい雰囲気を放っていた。とてもじゃないが、選ばれし子どもの紋章だとは思えない。でも、カイザーがああいう言い方をするってことは……。


「………」

 飛鳥くんは手をぎゅっと握りしめ、カイザーの方を見た。あの紋章は、一体……。
 


「よくもこんな卑怯な手を……! いくぞ、ブイモン!」

「わかった、大輔!」

 話を聞いていたか聞いてないか分からないが、大輔くんはD-3を掲げた。何であっても、デルタモンたちはどうにかしなければならないから、正しい行動だ。


「デジメンタルアーップ!」

「ブイモンアーマー進化! 燃え上がる勇気、フレイドラモン!」

 フレイドラモンが降り立つと、カイザーはマントを翻した。お、おお……あれはちょっとかっこいい……!


「ゆけっ、バケモン! フォーメーションA!」

 カイザーがそう合図をすると、バケモンは、ぺガスモンたちに襲いかかってきた。


「フォーメーションC!」

 バケモンたちは散り散りになり、ぺガスモンたちを惑わしていく。


「アタック!」

 カイザーがそう指示をすると、バケモンたちは一斉に攻撃を放った。それが全て直撃してしまう。


「デジモンカイザーだ! あいつが敵と味方の動きをしっかり把握して、効果的な指示を出しているんだ!」

「デジモンカイザーめ……!」

 バケモンは決して強いデジモンではない。あれを指示だけでここまでに強くなるなんて……。カイザーはダサいだけではなく、実力もそれなりのようだ。


「ナックルファイヤー!」

「ゴールドラッシュ!」

「ホーンブレード!」

「フォーメーションFだ!」

 ムースモンたちが必殺技を放つが、またもや避けられてしまう。


「やああああっ!」

 すると、大輔くんがカイザーの元へ走って向かった。その予想外の行動に思わず目が点になる。


「だ、大輔くん!?」

「賢ちゃーん!」

 カイザーは大輔くんと共に、下へ転がり落ちていった。あ、危ない……!
ようやく下までたどり着き、ほっとしていると、カイザーがデルタモンの前に大輔くんを投げ飛ばした。



「デルタモン、トリプレックスフォースだ!」

 デルタモンは口と両手から青い光を放出しようとしていた。このままだと、大輔くんが……!


「さようなら、本宮大輔くん」

「そうはいかないぜ!」

「フレイドラモン!」

 フレイドラモンは、大輔くんの後に立ち、カイザーを見据えた。


「俺たちは、誰にも負けない!」

 その瞬間、デルタモンがビームを放つ。フレイドラモンは、それに立ち向かっていった。


「ファイアロケット!」

 フレイドラモンは炎を身にまとい、レーザーを打ち破る。そのまま、デルタモンの胴につけられていたリングを破壊した。

 すると、空中にいたバケモンたちが目的を失ったようにふよふよと浮き始めた。


「カイザーの指示がなくなって、バケモンたちが焦っているぞ!」

 な、なるほど……。やはりバケモンはバケモンだった、というわけか。


「ここは僕に任せて、ダークタワーを頼む!」

『了解!』

 ぺガスモンに後を任せ、ホルスモンたちはダークタワーへ向かった。


「シューティングスター!」

 ぺガスモンは必殺技で、バケモンたちのリングを一気に破壊した。


「テンペストウィング!」

「ロゼッタストーン!」

「ビッグクラック!」

「ホーンブレード!」

 合流したムースモンたちと共に、デジモンたちが一斉に攻撃を放つ。ダークタワーは見事破壊された。


「やったあ!」

 私たちは喜びの声をあげた。リングも全部外したし、ダークタワーも倒した。これでとりあえずは、一件落着……かな。





75

前へ | 次へ



[戻る]

漆黒

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -