「とりあえず、どうやって出ようか?」
「そうね……」
何か行動するにも、ここを脱出しなければ話にならない。上に登ればもしかしたら出られるのかもしれないが、大輔くんがどこにいるかもわからないし……どうしよう……。そう考えていた時だった。
「私たちが案内してあげる」
「え……?」
その声に私は驚き、顔をあげた。後ろを振り返ると、そこにいたのは――。
「ろ、ロップモン……、それに……」
「あ、飛鳥くん!?」
京ちゃんが驚いて指をさした。なんと、私たちの後ろにはロップモンと飛鳥くんがいた。突然の事態に、思考がなかなか追いつかない。ロップモンはともかく、飛鳥くんは何故――!?
「どうしてここに!?」
「説明は後……って、言いたいとこだけど」
京ちゃんの問いに、飛鳥くんは苦笑いでポケットを探り、それを見せた。
「前の僕たちと同じデジヴァイス……」
タケルくんが小さく呟いた。飛鳥くんが持っていたのは、前の私たちと同じ、水色のデジヴァイスだった。
「ロップモンは俺のパートナーなんだ。ダークタワーがあるから、君たちみたいに進化はできないけどね」
飛鳥くんそう言うと、口元を歪ませ、デジヴァイスをポケットに戻した。
「とりあえず、ここから出て! ワームモンや他のデジモンも、無理やり抑えて来たんだから!」
ロップモンは、私の手を握り、そう誘導した。ロップモンなら、私たちに嘘をつくことはない。でも……。後ろを見ると、タケルくんたちは険しい表情で飛鳥くんとロップモンを見つめていた。
「……それって、あなたたちもカイザーの仲間だってことじゃない!」
ヒカリちゃんはロップモンを睨み、そう叫んだ。確かに、今ここにいる時点で、飛鳥くんたちが仲間という保証はない。だけど、私は……。
「あら、そのカイザーの仲間に助けられたのは誰かしら!?」
「なっ……」
ロップモンは珍しく強い口調でヒカリちゃんに詰めよる。ヒカリちゃんは思わず、言葉を失ってしまった。
「こらっ、ロップモン!」
飛鳥くんはロップモンを掴み、自分の元へ引き寄せた。ロップモンは不満そうに、飛鳥くんの方を見る。
「あ、飛鳥! でも……!」
「でももだってもないよ。湊海の仲間に、そんな言い方しちゃダメだろ?」
「うう……」
飛鳥くんはロップモンの頭をぽんぽんと撫でると、私たちの方を向き直った。
「ごめんな、ヒカリちゃんの言う通りなんだけど……」
飛鳥くんは申し訳なさそうに頬を掻き、謝った。そして、真剣な表情で私たちを見つめる。
「ここは、俺たちを信じてくれないか……?」
飛鳥くんは恐る恐る、私たちに手を差し出した。その手を握る人は誰もいない。そう思っていた。だけど……。
「あたしは信じるわ!」
京ちゃんはぎゅっと飛鳥くんの手を握った。
「京さん……」
「もう何が何だか分からないけど、飛鳥くんが嘘言うはずないもの!」
京ちゃんは私たちの方を振り返り、そう力説した。京ちゃん……やっぱり、あなたと友達になって良かったな。
「……僕も、行きます!」
続けて伊織くんも、飛鳥くんと京ちゃんの上に手を重ねた。
「伊織……!」
「飛鳥さんが嘘をついてるとは思えません。でも、ここにいる理由もわからない……。だから、ここから出た後、ちゃんと説明してください!」
「……ああ!」
飛鳥くんは、伊織くんの言葉にしっかりと頷いた。これは、飛鳥くんの人柄の賜物ってやつかな。すると、みんなの視線が私の方へ集まった。――もちろん、私の答えは、最初から決まってる。
「私は、最初から信じてるから。飛鳥くんと、ロップモンのこと」
私はにこりと飛鳥くんたちに笑いかけた。飛鳥くんはほっとした表情で肩をなでおろす。
後ろを振り返ると、タケルくんとヒカリちゃんが不安そうな表情で私を見つめていた。
「……飛鳥くんを信じられないなら、私を信じて。私は、あなたたちを危険な目に遭わせることは絶対しない」
「湊海お姉ちゃん……」
2人は、私のことをじっと見つめた。大丈夫、絶対私が守るから。
「ヒカリちゃん、タケルくん。いいね?」
「……うん!」
「わかった!」
2人がしっかりと頷いたのを確認すると、飛鳥くんは気が緩んだようで、目から涙が溢れていた。
「ありがとう、みんな……」
飛鳥くんは目元をゴジゴシと擦ると、いつもの笑顔を私たちに向けた。
「さあ、こっちだ!」
「遅れないでついてきて!」
飛鳥くんとロップモンを先頭に、私たちは穴から抜け出した。さすがの私にも、聞きたいことはいっぱいある。だけど――、信じさせてもらうよ、飛鳥くん!