アリジゴク

  とまあ、色々あったが、私たちはデジタルワールドへ向かった。
デスバレーにたどり着くと、周りは砂や岩山ばかりで、何も無かった。名は体を表すというのにぴったり。


 「本当に何もないところね……」

「でも、油断はできないよ。どこに敵が隠れているかわからないし」

「そうですね」

 ヒカリちゃんの呟きに、タケルくんは注意を促した。伊織くんも小さく頷き、同意する。


「よし、気をつけていくぞ!」

『おー!』

 私たちは大輔くんの掛け声に、拳をあげた。そのまま1列になり、ダークタワーの方へ歩き出す。それにしても本当に何も無いところだ。デジタルワールドはそれなりに冒険してきたつもりだが、ここのように行ったことのない場所もある。いつか全ての場所に行ってみたいなあ。


「わあっ!」

 その声に後ろを振り返ると、京ちゃんとホークモンがいなくなっていた。


「京さん!」

「ホークモン!」

 そうヒカリちゃんとテイルモンが声をあげた瞬間、私たちも地面に吸い込まれるように、下に落ちていった。


「うわあああああ!!」

「ここは……!? 」

「普通の穴じゃないことはっ、確かだね!」

 周りは普通の土ではなく、どこか異空間のような雰囲気を放っていた。それに、落ちるスピードが少し遅い。これは罠に嵌められたかな……、くそっ。

 そうしてしばらく落ちていると、地面が見えてきた。


「このままだと、ぶつかるわ!」

「任せてっ、デジメンタルアーップ!」

「僕もっ! デジメンタルアーップ!」

 京ちゃんとタケルくんが、ほぼ同時にD-3を掲げた。


「ホークモン、アーマー進化! 羽ばたく愛情、ホルスモン!」

「パタモン、アーマー進化! 天翔ける希望、ぺガスモン!」

 ホルスモンとぺガスモンは、私たちを間一髪のところで掴み、背中に乗せた。そのまま地面へゆっくりと着地する。


「助かった……」

「ありがとう、ホルスモン」

「ぺガスモンも」

 伊織くんがほっと胸をなでおろす。京ちゃんとタケルくんは、それぞれのパートナーにお礼を言った。
 あれ……? 私は不思議に思い、キョロキョロと辺りを見渡した。やっぱり、いない……。


「大輔くんは?」

「大輔くんたちは、落ちなかったみたい」

 ヒカリちゃんは首を傾げ、そう答えた。


「えっ、そうなの!?」

「なんで僕たちだけ……」

 京ちゃんが驚いた様子で目を見開く。タケルくんは顎に手を当て考え込んだ。私たちは思わず、顔を見合わせる。恐らくダサングラスのカイザーの仕業だろうが、大輔くんだけ別の理由が思いつかない。何か考えでもあるんだろうか。




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