天才少年


 休憩時間も終わり、後半戦が始まろうとしていた。


「んー! テレビで見るより美形じゃない! あれで年下なんて、信じられないわ!」

 京ちゃんはポロモンに抱きつき、頬ずりをした。先程よりはマシだが、やっぱり苦しそう。まあ、仕方ない……かな?


「隙がないですね……」

 伊織くんは小さくそう呟いた。確かに、後ろから『わっ!』てしても、全然驚かなそうな感じはする。大輔くんなら、転げ落ちて驚くんだけどなあ。


「頑張ってー! 大輔くん!」

「ファイトだよ!」

「大輔くん、頑張れ!」

「後半もしっかりね!」

「大輔、相手は同じ小学生だ。負けるんじゃないぞ!」

 私は大輔くんに声援を送った。いくら天才少年といっても、これまではこのチームと互角に戦っていた。少々不利になるかもしれないが、頑張ればきっと……!

 そして、試合開始のホイッスルが鳴り響く。たの瞬間、一乗寺くんはボールを奪い、大輔くんの横を通りすぎた。大輔くんが驚いた様子で振り返ると、一乗寺くんはとんでもない素早さで、パスを受け、大輔くんのチームの選手を抜いていく。そのまま、ゴールにシュートを決めた。う、うそ……!? 動きが他の子と全然違う、早すぎる……。どんな体の仕組みしてるんだ。


「わあっ! ナイスプレイよ、賢くん!」

「同点にされたんですよ?」

 京ちゃんの歓声に、伊織くんが眉を下げる。


「だって大輔より賢くんの方がかっこいいいじゃない!」

「大輔くんもかっこいいよ! ……えっと、一乗寺くんには負けちゃうかもしれないけど」

「湊海……」

 大輔くんのフォローをしたものの、私に嘘はつけなかった。飛鳥くんが悲しそうな表情で、京ちゃんと私を見比べる。


「……レベルが、違いすぎる。あいつ、小学生のレベルじゃないぜ? テクニックだけなら、ユースの代表クラスだ!」

「本当、他の人と全然動きが違うわ」

 太一さんは呆然とした様子で、そう呟いた。ヒカリちゃんも私の同じことを思ったようで、頷きながら試合を見続ける。


「あの子、すごく周りが見えてるよ」

「わかるの、タケルくん?」

「バスケにも共通する点があるからね。相手の動きや味方の動きが全部わかっているから、あれだけゴール出来るんだよ」

「やっぱり賢くん、かっこいい!」

「京さん……」

 タケルくんの解説に、京ちゃんが目を輝かせる。伊織くんは呆れた表情で京ちゃんを見つめた。もう……そっとしておこう……。
 そうこうしている間に、相手チームが9点目となるゴールを決めた。ホイッスルの音が辺りに鳴り響く。
その後も一乗寺くんは、チームメイトに指示を出していた。その指示は的確なようで、大輔くんのチームを翻弄し続ける。
そのまま一乗寺くんが再びシュートを決めようとした、その時だった。


「やあああっ!」

 一乗寺くんに追いついた大輔くんが、スライディングをかます。さすがの一乗寺くんも対応しきれなかったようで、地面に転んでしまった。ボールは場外までコロコロと転がっていく。


「今のは反則じゃない、ナイス大輔!」

 太一さんがそう大輔くんに声援を送る。そのすぐ後に、試合終了のホイッスルが鳴った。


「9対1で、田町少年FCの勝ち!」

「ありがとうございました」

 サッカーの試合で9対1はなかなか見かけない。危うく10点目も決められそうだったが、大輔くんのスーパーセーブでそれを防いだ。この試合のMVPは一乗寺くんだろうけど、私の中では大輔くんが1番だったよ。お疲れ様、大輔くん。

 その大輔くんはというと、一乗寺くんの元へ駆け寄り、会話をしていた。最後には握手を交わしていたので、どうやら一乗寺くんと仲良くなれたみたいだ。良かったね!




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