現実世界では、光子郎さんが薄暗いパソコン室で、腕組みをしながら椅子に座っていた。
「泉先輩!」
「光子郎さん!」
「どうしてここに?」
「しっ! 静かに」
光子郎さんは人差し指を立て、私たちにそう言った。
「……とりあえず、ここから出ましょう」
そうして学校から出た途端、光子郎さんはお説教を始めた。
「ヤマトさんから話は聞きました。家のパソコンのゲートセンサーで調べたら、本当にゲートは開いたままだったし。もし先生に見つかってパソコンの電源を切られたらどうするつもりだったんですか!?」
「こ、光子郎さん落ち着いて……」
「これが落ち着いていられますか!? そうやって貴女はいつもいつも僕に心配をかけて……! もう僕は前みたいに一緒にはいられないんですよ!? 分かっているんですか!?」
「わ、わかってますよぉ……」
光子郎さんは私の肩を掴み、揺らしながら叫んだ。なーんでこういう時は私がいつも怒られるんだよぉ。
「ま、まあそれくらいにしといてやれよ。本当は自分も行きたかっただけなんだろ?」
「太一さん!」
太一さんのふざけた発言に、光子郎さんが思わず振り返る。
「……そうだ。さっきアメリカの友人からメール来てたんですが、京くんたちのデジヴァイスのデータの解析を頼んでおいた結果が出たんです」
「アメリカの友人?」
「前からよく助けてもらっているんですよ」
「ああ、そういえばな」
太一さんが納得したように笑った。いつかの春休みの、飛び級した天才少年のことかな。デジヴァイスの解析もできるとは、何奴。
「……で、京くんたちの新しいデジヴァイスですが、デジタル・ディテクト・ディスカバーという意味の名前のようなものが、その情報の中に刻まれているということでした。3つともDで始まるから、これからは『D-3』と呼ぶことにするってことでした」
「D-3……。何だかかっこいい名前ですね」
私は自分のD-3をじっと見つめた。デジヴァイスだけど、今までのものとは違う。少し特別な、私だけの色。待ち焦がれていただけに、手に入れた時はとても嬉しかったな。
「他にも色々なことがわかってきて、例えば……」
光子郎さんが説明を続けていると、突然誰かのお腹の音が鳴った。
「腹減ったよー、だいすけー!」
どうやらその主はチビモンだったらしい。チビモンは大輔くんを見上げ、そう訴えた。
「あっ……お、俺も!」
続けて大輔くんもお腹の音が鳴り、恥ずかしそうに笑った。
「光子郎、話はまた明日だ。早く帰らないと大変だぞぉ、とっくに晩ご飯の時間過ぎちゃってる!」
太一さんのかけ声に、私たちは大慌てで家に向かって駆け出した。