湊に咲く花のように

『デジメンタルアーップ！！』

「ブイモンアーマー進化！　燃え上がる勇気、フレイドラモン！」

「パタモンアーマー進化！　天翔ける希望、ペガスモン！」

　ブイモンとパタモンは、それぞれアーマー進化をした。

「湊海お姉ちゃんとラブラモンは、僕と一緒にぺガスモンへ！」

「うん！」

「承知致しました」

　タケルくんはそう言うと、ぺガスモンの上から手を差し出した。私は頷き、その手を取ってぺガスモンに乗り込む。ラブラモンもその後に続いた。

「しっかり僕に掴まっててね」

「もちろんだよ」

　私はぎゅっとタケルくんの背中にしがみついた。

「……恥ずかしがらないんだから、もう」

「え？」

「何でもないよ。ぺガスモン、行こう！」

「ああ！」

　ガードロモンたちをなぎ倒しながら、私たちは先に進んだ。

「大輔、早く！」

「んなこと言ってもよぉ……」

　フレイドラモンが振り返り、大輔くんを呼ぶ。定員オーバーのため、走らされている大輔くん。相変わらず扱いがひどい。が、がんばって！

「近い……」

　タケルくんがデジヴァイスを見て、そう呟いた。私も自分のデジヴァイスを確認すると、青い点がすぐ近くまで迫っていた。

　一方大輔くんは、フレイドラモンに抱かれ、私たちへ追いついた。

「おーい、ヒカリちゃん見つけたぞ！」

「どこ！？」

「そっち！」

　大輔くんが指さした方を見ると、ガードロモンの大群にヒカリちゃんたちは追い詰められていた。このままだと、危ない……！

「ラブラモン！」

「はい、参ります！」

　ラブラモンがぺガスモンから飛び降りた瞬間、私はデジヴァイスを掲げた。

「デジメンタルアップ！」

「ラブラモンアーマー進化！　誇り高き慈悲、ムースモン！」

「ホーンブレイド！」

「シルバーブレイン！」

「ナックルファイヤー！」

　着地と共にムースモンが攻撃を放つ。同時に、ぺガスモンとフレイドラモンも、必殺技を撃った。

その攻撃に、ヒカリちゃんがこちらを振り向いた。

「大輔くん、タケルくん、湊海お姉ちゃん！　戻ってきてくれたのね！」

「へへっ、聞いたかタケル！　大輔くんの方が先だったぜ！」

「よかったね」

　タケルくんは大輔くんに微笑んだ。そういうとこ可愛いよねえ。

「……あ！」

　タケルくんが何かに気づいたようで、ぺガスモンと共には迂回する。その先には、ガードロモンがいた。

「リードブレイン！」

　ぺガスモンの攻撃で、ガードロモンは動かなくなった。

「よし、大輔くんたちのところへ戻ろう！」

「うん！」

　そのまま戻っていくと、大輔くんたちの姿が見えた。しかし、対峙していたのはガードロモンではなく――。

「あれは、アンドロモン！」

「ほんとだ……。でも、どうして……？」

　するとアンドロモンはフレイドラモンを、一撃で退化させた。大輔くんが慌ててブイモンを介抱しにいく。

『大輔くん！』

　私たちも急いでぺガスモンから降り立ち、駆け寄った。

「ホーンブレード！」

「シューティングスター！」

「スパイラルソード！」

　ムースモンとぺガスモンも立ち向かったものの、アンドロモンの攻撃が跳ね返り、当たってしまう。そして2体とも、成長期に退化してしまった。

「ラブラモン！」

「パタモン！」

　私たちはパートナーを抱きかかえた。

「やっぱり、完全体は強いよ……」

「今の私たちでは敵いません……」

「完全体！？　なんだよ、それ！」

「それは……」

　大輔くんに説明しようとしたその途端、横からヒカリちゃんが飛び出した。

「……アンドロモン！　私たちと一緒に戦ったこと、忘れちゃったの！？」

「ヒカリちゃん、これがあの時のアンドロモンだなんて、わからないじゃないか！」

「私には分かるの！」

「ヒカリちゃん……」

　――恐らく、ヒカリちゃんが言うならそうなのだろう。私もどことなく懐かしい感じがする。でも、今は……。

「もしそうだとしても、あのリングに操られているんだ。ヒカリちゃんの声は届かないさ！」

　私の言葉を代弁するように、タケルくんが叫ぶ。しかしヒカリちゃんは、諦めなかった。

「そんなことない！」

　ヒカリちゃんはタケルくんに向き合い、反論した。そんな2人の様子に、大輔くんが声をかける。

「何やってる、さっさと逃げるんだ！」

　アンドロモンはこちらにゆっくりと歩み寄ってきたが、大輔くんの方を見ると、突然止まった。

「アンドロモン……？」

「今よ！」

　テイルモンの号令で、ラブラモンたちはアンドロモンに飛びかかる。すると同時に飛んで来た赤い光線を顔面に喰らい、アンドロモンは仰向けに倒れた。

「やったぁ！」

「……今のビームは？」

　テイルモンが不思議そうに上を見上げた。私もつられて上を見上げる。

「羽ばたく愛情、ホルスモン！」

「京ちゃん！　ホルスモン！」

　そこにいたのは、京ちゃんを乗せたホルスモンだった。そして地面を突き破り、ディグモンも姿を現した。

「じゃじゃーん！　腹いっぱいメシ食ってパワーいっぱいのディグモン様だぎゃー！」

「ディグモン！」

「ゴールドラッシュ！」

　ディグモンは必殺技のドリルを飛ばしたが、アンドロモンのボディで全て跳ね返される。

「ぐえー！　ちっとも効いてやせんがや！」

「ヒカリー！」

　すると後方から、太一さんと伊織くんがやって来た。

「大丈夫か！？」

「お兄ちゃん、アンドロモンが！」

「アンドロモン、俺だ！　太一だよ！」

「たいち……」

　その途端、首に嵌められていたイービルリングが、バチバチとと電気を放ち始める。

「あああああああ！」

　アンドロモンは苦しんで、両腕を振り回しながら、ヒカリちゃんの前に立った。それでもヒカリちゃんは、怯えずにじっとアンドロモンを見据えている。
不意に、アンドロモンはヒカリちゃんの体を抱え上げた。

「ヒカリ！」

「ヒカリちゃん！」

「待って！」

　私たちは思わず駆け寄ろうとしたが、テイルモンの声に動きを止める。

「アンドロモン……」

「ひ、かり……」

「みんなで写真、撮ったよね……？」

　ヒカリちゃんの目から一滴の涙が零れ、アンドロモンの顔に滴り落ちる。

「しゃしん……」

　すると、ヒカリちゃんのポケットからデジヴァイスが飛び出した。
　アンドロモンに当たったデジヴァイスは桃色の光を放ち、その光はアンドロモンを包み込んでいく。

「ああ……」

　光が収まると同時に、アンドロモンはヒカリちゃんをゆっくりと地面に下ろした。

「私は……これで操られていた……」

　アンドロモンはそう言うと、首元のイービルリングを破壊した。

「アンドロモン！」

　アンドロモンはヒカリちゃんに頷きさくと、ダークタワーの方を向いた。

「ダークタワー、よくも私たちを……！　ガトリングミサイル！」

　アンドロモンは胸からミサイルを放ち、ダークタワーを破壊した。その瞬間、周囲にいたガードロモンたちの動きも止まる。

「ねえ、ガードロモンはずっと壊れた
ままなの？　もう元には戻らないの？」

「大丈夫。イービルリングによって書き換えられたプログラムを正常に書き直せば元に戻る」

　ヒカリちゃんの問いに、アンドロモンはそう答えた。そして辺りを歩いていたガードロモンのリングを壊し、プログラムを書き換える。

「そして、もう二度とカイザーの思い通りにさせないよう、この街を守る」

「わあっ！」

　ガードロモンは元気になったようで、両手を振り回した。私たちはその様子を見て、歓声をあげた。良かったね、ガードロモン！

　こうして私たちはアンドロモンに街を任せ、現実世界へ戻っていった。