私たちは砂漠らしきところを黙々と進んでいった。
「おい、タケル」
不意に、大輔くんがタケルくんに声をかけた。
「なに?」
「もう日が暮れるぜ……。お前は、帰れよ」
「えー、大輔くん。私の心配はしてくれないの?」
「湊海ちゃんは俺が守るからへーきへーき」
「おーかっこいー」
「なーに言ってんだか」
タケルくんは呆れた目で私たちを見たが、気を取り直したようでこう続けた。
「僕は大丈夫。お母さん、今日は遅いから。大輔くんこそ帰らないと、親が心配するんじゃないの?」
「構いりゃしねーよ」
大輔くんはそう言うと、ポケットを漁り、何かを取り出した。
「じゃ、どっちがヒカリちゃんを助けにいくか、コインで決めようぜ」
大輔くんはコインを上に弾き、手で押さえた。
「表が出たら、お前が帰る。裏が出たら俺が帰る」
「私は?」
「湊海ちゃんが来てくれた方が、ヒカリちゃん安心できるだろ? 行けるなら行った方がいい」
「ふーん……」
そこまで考えてるなら、タケルくんも一緒の方が良いのでは……というのは野暮なのかな。
大輔くんが手をどかすと、コインは表を向いていた。
「表だ! ヒカリちゃんを助けるのはおーれ」
すると、タケルくんが大輔くんのコインを奪った。
「うわあっ!」
「これ、どっちも表のコインだよね。カドミツで売ってたよ」
「知ってたのか……」
大輔くんは冷や汗をかいてタケルくんを見つめた。カドミツそんなものも売ってるのか……。太一さん騙すときに使ってみようかな。
「一緒に行こう」
「……わかったよ」
そしてようやく、2人で仲良く歩き出した。そのま私たちは透明なドームに包まれた街の方角へ進んでいく。
「始めからそうすりゃいいのに。バカみたい」
「そう言うなって……。ちょっと、かっこつけたかっただけなんだから」
「お年頃というものですね」
後方からデジモンたちの会話が聞こえる。おーい大輔くん、馬鹿にされてんぞぉ!