安全地帯



「ダークタワーは……ないっ!」

 デジタルワールドについた直後、大輔くんは辺りを見渡し、そう私たちに告げた。その言葉に、思わずほっと息をつく。ダークタワーなんてものがあったら、ピクニックどころではないからね……。


「ここは……確かにデジタルワールドだわ!」

 ミミさんさんは周りの景色を見ながら嬉しそうにそう言った。 久しぶりのデジタルワールド、その気持ちはとてもよくわかる。今日はパルモンにも会えたらいいな。
 そして私たちは歩きながら、今のデジタルワールドの現状を話した。


「デジモンカイザー?」

「ダークタワーを建てて、デジタルワールドを支配しようとしているんです!」

「この辺はダークタワー建ってないから安全っていうこと?」

「安全だからピクニックに来たんです」

「デジタルワールドでピクニックなんて、あたしたちの時代では考えられなかった。変わったものね」

「私たちも、これまではダークタワーを倒すためにここに来てたんですけど、今日はゴールデンウィークだし! たまには、デジタルワールドで楽しむのも、良いんじゃないかと思って!」

「大輔くん! そろそろお昼にしない?」

 京ちゃんとミミさんの話をにこにこと聞いていたタケルくんは、ふと大輔くんにそう切り出した。


「まだ早いんじゃないのー?」

「ふーん……私、お腹減っちゃったー。湊海お姉ちゃんもそう思うでしょ?」

「え? いや……」

 私はどちらでも良かったのだが、ヒカリちゃんはぽんと私の肩を叩いた。この重圧は恐らく気のせいではないだろう。ひ、ヒカリちゃん強くなったなあ……。


「ちょ、ちょっと小腹は空いたかな!」

 私がそう言うと、ヒカリちゃんはにこりと笑い、手を握ってくれた。お、おお、良かった――。


「……お昼にしよう!」

 そんなことをしている間に、大輔くんの気も変わったらしい。みんなにそう宣言をし、先陣を切っていった。


「何だよそれ……」

 先程とは180度言っていることが違う大輔くんを見ながら、タケルくんは小さく呟いた。


「ヒカリちゃんのおかげだよ」

「……それだけじゃないんじゃない?」

「え?」

「さ、僕たちも準備しよっか」

 タケルくんはそう言うと、私とヒカリちゃんの背中を押して前へ進んだ。


「……湊海お姉ちゃん。このままだと、大変なことになるよ?」

 ヒカリちゃんはタケルくんに聞こえないような小さい声で、私にそう呟いた。


「な、何が……?」

「気がつくまで教えてあーげない!」

「ええ……」

 そんなこと言われると、気になるんだけどなあ……。





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