意外な来訪者


 茂みからこっそり顔を出し、人がいないのを確認した後、大輔くんが裏門を開ける。


「今だ!」

 その合図で私たちは一気に学校内に侵入した。そのまま静かに歩を進めていく。何とか校内まで入ることができたので、私はほっと息をついた。


「んもう、どうしてパソコン部の私がパソコン部の部屋に行くのに、こそこそしていかなきゃいけないのぉ?」

 パソコン室への廊下を歩いている途中、京ちゃんが腕組みをしてそう文句を言った。


「ねえ、湊海ちゃん?」

「うん。部活で使わせてくれてもいいのにね」

「仕方ないですよ、原則的に休日は学校の施設使用禁止なんですから」

「しーずーかーにー!」

 大輔くんは私たちを振り返り、そう注意をした。おっと、そういえば中にいることバレちゃダメなんだよね。私たちは苦笑いをして、大輔くんに謝った。


「じゃ、入るぞ」

 パソコン室の前に着くと、大輔くんが静かに扉を開けた。私たちはそのまま、デジタルワールドに行く準備にとりかかった。


「よし、ゲートは大丈夫だね」

「そうね、準備オッケーよ」

「京、頼む」

「ビンゴ! 選ばれし子どもたち、出動!」

 大輔くんの掛け声でゲートを開こうとしたその時、がらりと音を立ててパソコン室の扉が開いた。私たちは目を見開いて、扉の方を向いた。ま、まさか人がいたなんて――。
 しかし、そこにいたのは意外なお方だった。


「……あなたたち、何してるの?」

『ミミさん!』

「ミミさん?」

 なんと、そこにいたのはアメリカにいるはずのミミさんだった。私たちは思わず声をあげた。大輔くんたちはその名前を聞いて、不思議そうに私たちを見つめた。


「湊海ちゃん、タケルくん、ヒカリちゃん?」

『はい!』

「大輔くん、京さん、伊織くん。この人は前の選ばれし子どものひとり、太刀川ミミさんです!」

「へえ、この人が!」

 タケルくんは大輔くんたちに、ミミさんを紹介した。その間にミミさんは私たちのそばにやってきた。


「空さんからお噂は聞いてます!」

「変な噂でしょー?」

「ええ……ビンゴ……」

「なーに、それー?」

「今は、俺たちが選ばれし子どもなんです」

「ふふ、そうみたいね」

「パタモンやテイルモン、ラブラモンも元気そうじゃない」

『お久しぶり』

「いつ、アメリカから帰ってきたんですか?」

「けさ。お台場小学校の前通ったら、急に懐かしくなっちゃって……。こっそり裏門から、入っちゃった。ふふ!」

「さっすがミミさん!」

 私はパチンと指を鳴らした。とても良いタイミングである。おかげでこうやって会うことが出来たのだから。


「俺たちも裏門から入ったんです!」

 大輔くんがにこやかにミミさんにそう言った。


「え?」

「俺たち、これからデジタルワールドにピクニックに行くんです!」

「何それ……?」

「ミミさんも行きましょうよ!」

「うーん、いとこの結婚式は明日だし……行ってもいいよ?」

「ビンゴ!」

 京ちゃんの誘いに、ミミさんはそう答えた。京ちゃんは嬉しそうに人差し指を上へ突き出した。


「京、お前ひとりで決めんなよー」

「え、だめぇ?」

「ああ、いや! 俺は良いけど?」

「私もいいよ!」

「賛成です」

「僕も!」

「私も!」

「ビンゴビンゴビーンゴー!」

 ミミさんは京ちゃんのはしゃぐ様子をにこにこと見つめていた。ミミさんも、すっかり素敵なお姉さんになったなあ……。


「選ばれし子どもたち、出動!」

 いつもの京ちゃんの号令を合図に、私たちはデジヴァイスを掲げた。今日のピクニックは、楽しく終わりますように。







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