私たちがたどり着いたのは、どこか森の中だった。
「あ、元に戻ってる!」
その伊織くんの声にデジモンたちを見ると、確かに成長期になっていた。
「デジタルワールドに戻ると戻るんだぎゃ」
「いえい」
アルマジモンとホークモンがそう説明をした。いや、ホークモンは別に説明してないけど。面白いデジモンだ。
すると、どこからか電子音が聞こえた。自分のデジヴァイスを見たが、どうやら違うようだ。じゃあ、これは――。
「ん?」
「何これ?」
ヒカリちゃんが首を傾げた。
「デジメンタルです!」
「え?」
「デジメンタル?」
「近くに、デジメンタルがあるんです!」
伊織くんはタケルくんとブイモンにそう答えた。
「まだ他にデジメンタルがあるのか?」
「どういうこと?」
大輔くんと京ちゃんがそう疑問を口に出した。もしデジメンタルが紋章と関係しているなら、残るデジメンタルは6つ。友情、純真、誠実、希望、光、そして慈悲。 近くにあるらしいデジメンタルには、一体どの紋章が刻まれているのだろうか。
「とにかく、探してみようよ!」
「よーし、探そう!」
という訳で、私たちはデジメンタルを探すことにした。森の中を歩いて進んでいく。
「どこぉー?」
「多分この辺りだと思うんですが……」
伊織くんが周りを見渡しながらそう呟いた。私たちのデジヴァイスでは反応しないので、デジメンタルに関しては伊織くんたちを頼るしかない。何とか見つかると良いんだけど――。
「今度はどんなデジモンが生まれるのかな?」
「さあ、想像つかんだぎゃ」
アルマジモンはタケルくんにそう返した。
「でもそれって、他にも選ばれし子どもがいるってこと?」
「さあ? 私たちにも分かりません」
ヒカリちゃんの質問に、ホークモンは首を傾げた。残念ながら今、新しい選ばれし子どもはこの場にいない。見つけた所で持ち上げられないのは、少々困りものだ。こちらも早く見つかれば良いのだけど。
「ふーん……ブイモンたちも分からないんだ」
「だって俺、ずっとデジメンタルの下にいたんだもん。外の事なんて分からないよ」
ブイモンは私にそう答えた。そりゃそうか。
「こっちの方だぜ!」
その間にもデジヴァイスは激しく反応している。大輔くんがデジヴァイスを見ながら声をあげた、その時だった。
『何をしている!』
突然、私たちの前にデジモンカイザーが現れた。
「で、出た!」
「あっ、てめえ! この前はよくも!」
大輔くんがカイザーに殴りかかったが、通り抜けて地面に転んでしまう。
「大輔くん!」
「これは立体映像だ! 実体じゃない!」
タケルくんがそう叫んだ。いつかのゲンナイさんみたいな事しやがって!
『君たちのように愚かな人間たちが、どうして自由にこの世界を出入り出来るんだ?』
「どうしてって……」
私たち困惑して顔を見合わせた。カイザーである君が暴れてるからじゃないのかなぁ――?
『本当ならここには、選ばれた者しか入って来られないはずなんだよ』
「ええー!?」
何言ってるんだこの人!?
「じゃあ、お前はどうしてここにいるんだ!」
『それは僕が選ばれし子どもだからだよ』
「選ばれし子ども!?」
「ええっ!? 貴方も?」
大輔くんの問いに、カイザーはそう答えた。タケルくんとヒカリちゃんが驚きの声をあげる。
『とにかく君たちの存在は僕を不愉快にさせる。君たちと僕が、まるで同じ扱いを受けているかのようだ……』
「同じ扱いじゃいけないのかよ!」
「同じ選ばれし子どもなのに、君本当失礼だね!」
大輔くんと私がそう叫んだ途端、カイザーの映像が消える。そして私たちの目の前に、ティラノモンに乗った本物のカイザーが現れた。
「なんだぁ!?」
「選ばれし子どもというのは、僕のように完璧な人間のことを言うんだ! 君たちじゃない!」
カイザーは高らかにそう宣言した。すごい自信だな。
「完璧な人間だとぉ!?」
「一体何様のつもりなんだ!」
大輔くんとタケルくんがカイザーに怒鳴り込んだ。きっとカイザー様なんだよ。
「このデジタルワールドは僕のものだ! 早く出て行け!」
「わ、わがままだなぁ……この世界は別に貴方のものじゃないからね!」
「ははは、面白い冗談だ」
「ははは……」
私は思わず笑い返した。面白いのはお前の頭と格好だよ!
「何それ!」
あまりに馬鹿げていると思ったのか、京ちゃんがそう声を荒らげた。
「僕のゲームを邪魔するなら、それ相当の仕打ちをせざるを得ないな……。やれ! ティラノモン!」
「危ない!」
そのヒカリちゃんの叫びに、何とか後ろに飛び退き、ティラノモンの炎を避ける。
「何するんだよ!」
大輔くんがそう怒鳴ったが、カイザーは無言のままだった。
「行くぜ、大輔!」
「よーし!」
ブイモンの掛け声に、大輔くんはデジヴァイスを構えた。
「デジメンタルアップ!」
「ブイモン、アーマー進化! 燃え上がる勇気、フレイドラモン!」
「ふん、同じ手が何度も通用すると思うのか? これだから頭の悪い奴は嫌だよ」
カイザーは地面に飛び降りると、大輔くんにそう言い放った。
「ほんっとうにムカつく奴だなぁ!」
「いちいち嫌味っぽいよね……」
あまり性格がよろしくないのかしら――。
「ティラノモン!」
カイザーがそう名前を呼ぶと、ティラノモンはフレイドラモンを手で弾いた。フレイドラモンは空高く飛ばされたが、何とか体勢を立て直し、再びティラノモンに向かっていく。
「ナックルファイヤー!」
しかしティラノモンはフレイドラモンの必殺技を尻尾で打ち消した。
「何!? ちくしょう!」
「京さん!」
「うん!」
その様子を見ていたホークモンが京ちゃんに呼びかけた。京ちゃんは頷き、デジヴァイスを掲げる。
「デジメンタルアップ!」
「ホークモン、アーマー進化! 羽ばたく愛情、ホルスモン!」
ホルスモンはティラノモンの炎を避けながら、そちらへ向かった。
「レッドサン!」
ホルスモンは見事必殺技を命中させ、ティラノモンは体勢を崩した。
「数が多ければいいと思ってるのか? 出てこい、我が下僕たちよ!」
デジモンカイザーの掛け声で、ティラノモンがぞろぞろとこちらにやって来た。
「何だって!?」
大輔くんが声をあげる間にも数は増え、ついに囲まれてしまった。
「全部で5匹も!?」
京ちゃんが思わずそう叫んだ。ラブラモンたちが進化出来ない今、この数を相手にするのは厳しい。私はデジヴァイスをぐっと握った。でも、どうにかしないと――。