「大丈夫か? ごめんな、ああするしか手が無かったんだ……」
ブイモンはモジャモンたちにそう謝った。
「いや、これくらいの痛み、デジモンカイザーの手下になる苦しみと比べたら、何ともないわい」
そうモジャモンたちは自分たちの居場所へ帰っていく。私たちはその背中を見送った。
デジモンカイザー……あのダサいサングラスの下で一体何を考えているのだろう。あれならまだ、エテモンの方がマシな格好していたよ。――あ、そもそもあの猿は裸だったか。失敬。
「デジモンカイザーの奴! ……むむ、なんか俺、すっげえ頭にきちゃったぜ!」
「京さん」
「え?」
大輔くんはそう拳を握っていたが、ホークモンのその声に下を向いた。
「これからも、この私に力を貸してくれますか?」
「いいわ、とことん付き合ってあげる!」
ホークモンと京ちゃんはそう挨拶を交わした。うん! この2人、名コンビになる予感がするよ!
「伊織、これからもよろしくだぎゃ」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
アルマジモンと伊織くんもお互いに頭を下げていた。とても可愛らしい。
「これからは、あたしたちの分まで頑張って貰わなきゃ!」
「いえ、僕たちも頑張らなくっちゃ!」
私たちは思わず空さんの方を見た。その横で光子郎さんが意気込み、そう宣言する。
「そうよ、空! あたしたちだって!」
「まだまだ若いもんには負けられまへん!」
「そうね!」
空さんはくすりと笑い、ピヨモンたちの言葉に頷いた。
「さ、帰ろうぜ!」
その大輔くんの掛け声で、私たちは現実世界へ戻った――のだが。
「うわあああ!」
私たちはまた着地に失敗し、もみくちゃになった。騒動を聞いたのか、太一さんが慌ててパソコン室に入り、声を掛ける。
「みんな、無事か!?」
『無事でーす……』
私たちは太一さんにそう返した。相変わらず下で誰かがクッションになってくれているようで、私は無傷だった。誰か分からないけど、ごめんね!
「デジモンも連れて来たのか!?」
「え?」
隣を見ると、確かにそこにはラブラモンたちがいた。ブイモンたちが見当たらないが――まさか、この小さい子たち?
「ええ!?」
「きゃはー! 可愛い!」
京ちゃんはピンクのひな鳥のようなデジモンに頬ずりをきた。
「別に連れて来た訳ではありません! 勝手について来たんです。でも、なんでこんな形に?」
伊織くんがそう疑問を口に出した。
「きっと、幼年期に戻っちゃったのね」
「でも、僕たちは変わらないよ?」
「デジヴァイスが、違うからなんじゃないかな?」
「多分ね」
私はラブラモンの頭を撫でた。今までラブラモンたちがこちらの世界に来た時も、退化なんてしていなかった。太一さんと2人でこちらに戻った時はコロモンになってしまっていたが――あれは完全体に進化した後だったからって話だろうしなぁ。
まあ持ち運びの面を考えると、幼年期の方が都合が良いよね。あと、可愛い。
「あれ? ピヨモンとテントモンは?」
『空ー!』
その声に私たちはパソコンの画面を見た。そこにはピヨモンとテントモンの姿が映っている。
『空! あたしたちデジモンカイザーの事、色々調べに行ってくるわ!』
『何か分かりましたらお知らせしますよて』
「分かった、気をつけて! 無茶はしないでね!」
空さんはピヨモンたちにそう言い聞かせた。デジモンカイザー……服装がダサい事以外は何も分からない、謎に包まれた人物。 もっと接触を試みるべきか、はたまた――?
「み、皆さん……すみませんが、早くどいてくださーい!」
すると光子郎さんの懇親の叫びが、パソコン室中に響き渡った。ご、ごめんなさい、光子郎さん……!