「う……うう……!」
私は飛鳥くんの腕にしがみついて、唸っていた。どうしても怒りが収まらない。強制的にデジタルワールドに連れてこられたから、尚のことだ。
「全く……こんな様子じゃ何もできないよ。ほら、ちょっと休憩」
飛鳥くんがそう言うや否や、私はラブラモンに抱きついた。もう何かにしがみつかないと、やってられない。
「湊海様……」
「怒ってる湊海ちゃんも可愛いけど、やっぱり笑顔になってほしいわねえ」
ロップモンはよしよしと私の頭を撫でてくれた。優しさが胸に染みるが、それとこれとは話が別だ。私はラブラモンに顔を埋めた。もう嫌だ、タケルくんの大馬鹿……!
「飛鳥さん、何をしてるんですか?」
「こういうときに、話を聞くのが上手いやつがいるんだよ」
しばらくラブラモンに顔を埋めていると、聞き慣れた声が耳に入った。
「どうしたの飛鳥さん。いきなり呼び出して……」
顔をあげると、そこには賢ちゃんがいた。その予想外の人物に私は目を見開いた。
「賢ちゃん……」
「俺たち、ちょっと復旧作業してくるから。湊海の相手、してやってくれないか?」
「それはいいんだけど……湊海さん?」
賢ちゃんはしゃがみ込み、私に微笑んだ。その笑顔を見た私は何故だか涙がボロボロと溢れた。
「わ、泣かないで……。えっと……えい」
私はそっと賢ちゃんに抱き締められた。ほんのり伝わっていく体温に、私は更に悲しくなる。涙が溢れて、止まらなかった。
「うん……。やっぱりこういうのは賢だよなあ。俺に話しづらいだろうし」
「そうねえ……」
「じゃあ俺たち、行ってくるから。湊海のこと、頼んだよ」
「わかった」