小さな兎拳士トゥルイエモン

 タケルくんの様子がおかしいと気づいた、翌日。私はひとりでパソコン室に来ていた。


「湊海ちゃん、飛鳥は?」

「京さんも……」

 ロップモンとボロモンはそう私に尋ねた。私はしゃがんでふたりの頭を撫でる。


「今日はふたりとも、日直なの。そのうち来ると思うよ」

 そのとき、丁度扉の開く音がする。振り返るとそこには――。


「……タケルくん」

「やあ。湊海お姉ちゃん。早いね」

 タケルくんは気軽な様子でそう言うと、ランドセルを椅子の上に置いた。今のところ、彼の態度は普通だ。


「大輔くんとヒカリちゃんは?」

「大輔くんはこの前ガラス割ったときの反省文書いてる。ヒカリちゃんは係の仕事があるみたいだよ」

「そうなの……」

 受け答えも普通だ。私は内心ほっとしていた。やっぱり、昨日までのタケルくんは普通じゃなかったんだ。何か嫌なことでもあったのかな。
そう考えていると、タケルくんは私の隣に立ってこんなことを言った。


「あはは。そんなに僕とふたりっきりなのが嫌なの?」

「別に、嫌じゃないよ。それにラブラモンたちもいるし、ふたりっきりってわけじゃ……」

「パタモン。ちょっと出てて」

 タケルくんは私の言葉を遮り、真顔でパタモンの方を向いた。


「え?」

「ラブラモンたちも」

「で、でも……」

「大丈夫。すぐ済むから」

 タケルくんはにこりと笑うと、ラブラモンたちを全員抱える。そのまま扉の外へ出してしまった。


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