「みんな、街を守って!」
『了解!』
ミミさんの号令で、ムースモンたちは動き出す。
「ロゼッタストーン!」
まずはネフェルティモンが、石でダムの壁の穴を塞ぐ。
「ナイス、ネフェルティモン!」
その間に水が来ていないところまで、ムースモンたちは走っていく。
「ホーンブレード!」
必殺技で木を切っていき、ぺガスモンとネフェルティモンのサンクチュアリーバインドで木を縛る。木を地面に置き、その前の地面にメイルドラモンとディグモンが地面ヒビを入れる。
木で水がガードされ、地面の穴に水が入っていく。ついに水は干上がり、何とかそこで、水は食い止められた。
「やったぞ!」
「ありがとう、みんな!」
大輔くんとミミさんは嬉しそうに言った。
「ああっ! ゴーレモンが!」
「え?」
そのユキミボタモンの声にゴーレモンの方を見ると、奴はダムの上に登っていた。
「なんてやつだ!」
「本気だわ……」
「本気って?」
ヒカリちゃんに京ちゃんが聞き返す。
「本気でダムを壊すつもりなんだわ!」
「そんなことして、一体何になるって言うの!?」
ムースモンたちが慌ててゴーレモンの方へ向かっていく。
「街を、破壊するつもりです!」
「街だけじゃない。あの街に住んでいるデジモンたちも……!」
伊織くんとタケルくんは顔色を悪くさせた。――このままじゃ、街もデジモンたちも、むちゃくちゃになってしまう。
「それはわかるけど、でも、どうして? どうしてそんなひどいことを……!」
京ちゃんはゴーレモンを見た。
「何か理由があるわけでもなさそう……。目的が掴めないよ」
私は顎に手を当て考え込んだ。街を壊したって、デジモンたちを犠牲にしたって、それで得られるものなんてないはずだ。ゴーレモンはどうして……?
「あっちが本気なら、こっちも本気を出さないと!」
「本気って、どういう本気よ!?」
その大輔くんの発言に、京ちゃんは大輔くんの方を見る。
「本気で、倒す!」
「それって殺すってこと!? そんなのダメよ! 大輔落ち着いて、落ち着いて冷静に考えよう?」
「冷静にどうしようって言うんだよ!?」
「どうするって……とにかくダムを守ることが先決だわ!」
「敵を倒さずにか?」
「できたら……いえ、絶対に!」
「それは無理だよ。しばらく相手の動きを止めることはできるかもしれないけど、ほんの少しの間だけだ」
タケルくんの言葉に、京ちゃんは動揺した。
「倒すしかないのかしら……。スティングモンや、一乗寺賢くんがやったように!」
ヒカリちゃんは複雑な表情でそう言った。
「僕は嫌だ! そんなことしたら僕たち、あいつと同じになってしまう!」
「そうよね!」
伊織くんに京ちゃんは同調した。
「違う! 伊織は誤解してる! あいつが敵を倒したのは、きっと倒さなければならない理由があったんだ!」
大輔くんは伊織くんにそう力説した。飛鳥くんも落ち着かせるように、伊織くんの肩を叩く。
「そうだよ伊織。もう賢はカイザーじゃないんだ。無闇に命を奪うようなこと、絶対しない」
「飛鳥さん……でも!」
「誰か、一乗寺賢のメールアドレス知らない?」
伊織くんの言葉を遮り、ミミさんはそう私たちに訊いた。
「え?」
「私、知ってますけど……」
「貸して!」
ミミさんは京ちゃんのDターミナルを受け取り、文字を打ち始めた。京ちゃんが賢ちゃんのメールアドレスを知っているのも意外だが、それよりミミさんは――?
「何してるんです?」
「きっと、彼もDターミナルを持ってるわよね? だったら!」
「あいつに助けを!?」
「そうよ、いけない?」
「あ、いえ……。でも来るかどうか……」
京ちゃんはミミさんの返しに、目を伏せた。――ミミさんは私たちが出来なかったことを、率先してやってくれた。私にもっと勇気があれば……。ぐっと拳を握る。でもきっと、賢ちゃんなら来てくれる。だって……!