不穏

「なによ、あいつ……」

 京ちゃんが驚いたように、扉の方を見つめた。私はぽんと京ちゃんの肩を叩く。


「大輔くんは大輔くんなりに考えてるんだよ……賢ちゃんのこと」

「ふーん……」

「どうしたの?」

 するとそれと入れ替わるように、パタモンを抱っこしたタケルくんがやってきた。


「一乗寺賢を、仲間に誘いたいんだって」

「僕は、反対だな……」

 タケルくんはさらりと自分の意見を言った。


「私も……。ま、一乗寺くんだって、その気はないでしょうけどね。人間そう変わるもんじゃないし……。それより、どうしてダークタワーの機能が回復したかなんだけど」

「どうして消えたかも」

 京ちゃんとタケルくんは顔を見合わせた。結局のところ、ダークタワーのことはなにひとつわかっていない。だからこそ、賢ちゃんに聞きたかったんだけど……。


「ま、湊海お姉ちゃんは違うみたいだけど」

「な、なに……?」

 タケルくんは突き放すような口調で私にそう言った。私は思わず、タケルくんに聞き返す。


「随分肩入れしてるみたいだから。賢ちゃんとやらに」

「……何でそんな言い方するの。私は」

「だって、事実でしょ」

 私たちは静かに睨み合った。なんで、そんな言い方しか出来ないんだろう……。
そんな私たちの様子を見て、京ちゃんが間に入った。


「ちょ、ちょっと。私たちが仲間割れしてどうするのよ。ふたりとも落ち着いて」

「別に。僕本当のこと言っただけだから」

「……最近のタケルくん、何か意地悪だね。嫌な風に」

「あはは、そんなことないよ」

 タケルくんはくすくすと笑いながらそう言った。その笑い方はどこか私を馬鹿にしているようで、カチンと来る。――でもここで言い争っても仕方ない。私はタケルくんに背中を向けた。


「……京ちゃん、戻ろう」

「え、あ……うん」

 私は京ちゃんの手を引いて、パソコン室を出た。




「……湊海お姉ちゃんの、ばーか」

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