「飛鳥くん、どうだった?」
パソコン室に入ってきた飛鳥くんにそう訊くと、彼は首を横に振った。
「ダメ。湊海と一緒。もう俺たちとは行動できないの一点張りだ」
「そう……」
私たちはあの後、賢ちゃんにメールをした。しかし彼は答えてくれるどころか、今後一緒に行動をしたくないと言ってきた。
「ダークタワーのこと、多分あいつ知ってると思うんだけど……」
「急にどうしたんだろう、賢ちゃん……」
「何話してるの、ふたりとも!」
そう考え込んでいると、大輔くんが私の背中に乗りかかってきた。
「大輔くん……どうしたの?」
「そうそう。実はな! 俺、一乗寺も俺たちの仲間に入れたいと思ってて!」
「えっ?」
私は思わず大輔くんに聞き返した。
「あいつ、この前伊織のこと助けてくれただろ? そのとき思ったんだ。もう一乗寺はカイザーだったときと違うって。だから!」
「大輔……」
飛鳥くんは大輔くんを見て微笑んだ。私もぎゅっと大輔くんに抱きつく。――やっぱり大輔くんは、大輔くんだね。
「わっ、湊海ちゃんったら……」
「……大輔。俺たち、話したいことがあるんだ」
その飛鳥くんの真剣な言葉に、大輔くんは背筋を伸ばす。
そこで私たちは、賢ちゃんのことを話した。実はデジタルワールドで会っていたこと、一緒に復旧作業をしていたこと、急に断られてしまったこと――。
大輔くんは全部話を聞くと、私たちにこう言った。
「そっか……。飛鳥さんと湊海ちゃん、そんなことしてくれてたんだな」
私たちはこくりと頷いた。大輔くんならわかってくれると思っていたが、予想以上だった。彼の器はきっと、誰よりも大きい。
「ありがとう。こんな大事なこと、俺にだけ話してくれて。話を聞いたら、余計に一乗寺を仲間に入れないとって思ったよ。……京、呼んでもらっていいか? 話をしたいんだ」
私たちは京ちゃんをパソコン室に呼んだ。その際京ちゃんが給食の残りを持ってきたため、デジモンたちに食べさせる。
大輔くんによる説得は、正直なところあまりうまくいってなかった。
「だって、もう昔の一乗寺じゃねえんだし!」
「そうかなぁ……」
「そうだよ!」
大輔くんは力説したが、京ちゃんは微妙な反応だった。私たちは思わず顔を見合わせる。飛鳥くんのときは受け入れてくれた京ちゃんだったが、今回はそういうわけにはいかないらしい。
「そりゃあ、ワームモンが死んだときは、デジモンが生き物だってこと、彼も気づいてくれたって思ったよ? でも……この間の戦いで、彼敵とはいえ、デジモンを殺したのよ!? 私にはわからない……」
京ちゃんは顔をあげ、大輔くんを見つめた。
「それでも、昔の彼じゃないって言えるのか……」
大輔くんは舌打ちすると、パソコン室から出ていった。
「だいすけぇ!」
「大輔!」
チビモンと飛鳥くんが、慌てて大輔くんを追いかけていく。