街に戻ってくると、大輔くんは赤ちゃんデジモンたちと戯れていた。
「京さん!」
「飛鳥くん!」
「うまくいったみたいだね」
ヒカリちゃんとタケルくんはそう言った。
「うん。子守を頼んどいた。やっぱり適任だったわねえ」
「大輔、面倒見いいからなあ」
懐かれている大輔くんを見て、京ちゃんと飛鳥くんはしみじみと言った。
「大輔くんって、デジモンの子どもたちの中でもガキ大将になっちゃうんだ」
「さすが大輔くんだね」
私はヒカリちゃんと笑い合った。大輔くんの人の良さは、やっぱりデジモンでもわかるんだなあ。
「で、どうだった? 原因わかったの?」
「いや、それで僕たちも普通の進化は無理だった」
「そう……」
タケルくんの返しに、京ちゃんは眉をひそめた。
「まあ、しばらく様子を見ようよ。伊織くんは?」
どうやら伊織くんは昨日の地下工事の続きをしているらしい。私たちも街を直していると、突然地面から砂埃が吹き出した。
しばらくそちらを見ていると、見慣れないデジモンが現れた。伊織くんが一緒だった上にらどこか面影がある。アルマジモンの進化系だろうか。
そのとき、突然伊織くんが周りの岩と共に宙に浮いた。
「伊織くん!」
しかし、伊織くんは空で待ち構えていた緑の仮面ライダーのようなデジモンに、抱えられる。仮面ライダーはアルマジモンの進化系のデジモンに伊織くんを渡すと、サンダーボールモンに向かっていった。
「伊織ー!」
「大丈夫なの!?」
「伊織くん!」
私たちは伊織くんの方へ駆け寄った。
「はい!」
「だぎゃあ」
「伊織!」
ホルスモンに乗った京ちゃんも、伊織くんの元へやって来る。
「もしかして、このデジモン……!」
「はい。アルマジモンが、進化したんです!」
伊織くんはホルスモンにそう答えた。
「進化した……!?」
「アルマジモンが!?」
ヒカリちゃんと大輔くんが驚く。
「じゃあ、あっちは?」
パタモンは仮面ライダーの方を見てそう言った。
「わからんがや」
「あの緑の方、僕を助けてくれた」
「え……?」
ヒカリちゃんが小さく声を漏らす。
「スパイキングフィニッシュ!」
仮面ライダーは必殺技を放つ。サンダーボールモンは消えてしまった。
「で、デジモンが……」
「なんてことするんだ……!」
「ひどい……!」
飛鳥くんが呆然と呟く。大輔くんと京ちゃんも、憤慨した様子だった。
ふと屋根の上に見ると、そこに賢ちゃんがいた。
「一乗寺、賢!」
「デジタルワールドに来てたの……うわあ!」
私たちのあいだを仮面ライダーが通り抜けていく。仮面ライダーは賢ちゃんの元へ行った。
「危ない!」
京ちゃんが思わず叫ぶ。仮面ライダーは光ったかと思うと、ワームモンに退化した。それを賢ちゃんが抱える。
「ワームモン!?」
「ワームモンが、進化していたのか!?」
大輔くんとタケルくんが驚く。どうやらあの仮面ライダー、ワームモンが進化したデジモンらしい。すると賢ちゃんは屋根を下り、どこかへ行ってしまった。
「伊織を助けたのか、あいつ……」
「そう、だね……」
大輔くんと京ちゃんが呆然と呟く。賢ちゃんとワームモン、一体何を――?
私たちといるとき以外も、デジタルワールドで行動していたのか……。
気がつくと辺りはすっかり夕暮れになっていた。私たちはブランコに乗り、大輔くんたちと赤ちゃんデジモンが遊ぶのを眺めていた。
「人気もんじゃん?」
「ちっ! うるせー!」
からかうタケルくんに、大輔くんは顔を赤くして返した。
「大輔だよねえ」
京ちゃんは笑顔で大輔くんを見守っていた。すると伊織くんは立ち上がり、後ろを振り返った。
「ない……」
「え?」
「昼間、あそこにあったダークタワーがありません!」
私たちも立ち上がり振り返ると、確かにダークタワーがなくなっていた。
「本当だ!」
「いつの間に……!」
京ちゃんとタケルくんが呟く。
「だから進化できたんでしょうか?」
「だぎゃあ」
伊織くんはアルマジモンを抱え、ダークタワーのあった方を見つめた。
「……飛鳥くん、これって」
「聞いてみないとわからないな……」
私と飛鳥くんは小声で会話をする。もしかしたら賢ちゃんは、何かを知っているのかもしれない。私たちはそう考えたのだった。