揺れる心


「ダメだわ」

「私もできません」

 完全体への進化を試したテイルモンが首を横に振る。続けて試したラブラモンも困ったように私の顔を見上げた。


「テイルモンはともかく、ラブラモンまで……」

「僕たちもやってみよう。パタモン、いくよ」

「パタモン進化ー! エンジェモン!」

 タケルくんがD-3を構えたものの、やはりパタモンは進化できなかった。


「ダメだよタケル……」

「パタモンも進化できないなんて……」

 テイルモンが小さく呟く。


「どうして?」

 タケルくんはヒカリちゃんに首を横に振る。私たちはダークタワーを見上げた。


「もしかすると、またダークタワーが機能し始めたのかもしれない……」

 タケルくんの呟きに私たちは眉をひそめた。


「でも、賢ちゃんはそんなことしないよ。何で……」

「何でしないってわかるの?」

 タケルくんが鋭い目付きで私を見た。私はぴくりと体を震わせた。


「それは、その……反省してたし」

「なんで? そうとは言いきれないでしょ?」

「ちょっと、タケルくん……」

 私に詰め寄るタケルくんを、ヒカリちゃんがそっと制す。しかしタケルくんは首を横に振った。


「いいや。ヒカリちゃんも気づいてるよね。湊海お姉ちゃん、僕たちに何かを隠してる」

「……湊海お姉ちゃんが言えないことなら、無理に聞かなくたって」

「一乗寺賢のことだよね。最近飛鳥さんと話してることは」

 ヒカリちゃんの言葉を遮り、タケルくんは私にそう尋ねた。


「……僕たちに話せないようなこと、してるの?」

「違う、そういうわけじゃなくて……!」

 私は慌てて否定をしたが、タケルくんは納得をしないようで私の肩を掴む。


「そんなに大事かよ……」

「え……?」

「……もういい。とりあえず、大輔くんたちのところへ戻ろう」

 タケルくんは私の肩を離すと、ずんずんと歩き始めた。私たちは呆然とタケルくんの背中を見つめる。


「珍しいわね……タケルがあんなに怒るのは……」

「うーん……そうかも」

 テイルモンの呟きに、パタモンは頷いた。この前の基地のことを除けば、確かにタケルくんはあまり怒らない。いつも笑顔なイメージだ。


「私もちょっと複雑だけど。湊海お姉ちゃんの考えること、何となくわかるから」

「ヒカリちゃん……」

 ヒカリちゃんはにこりと笑うと、私の腕を掴んだ。


「大丈夫。湊海お姉ちゃんは間違ったこと、してないわ。今は何も話さなくていい。でも無理はしないでね」

「……うん。ありがとう」

 ヒカリちゃんに背中を押され、私たちはタケルくんに追いついた。その頃にはいつものタケルくんに戻っていたが――私の内心は、複雑だ。


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