翌日。私たちはなかなか来ない大輔くんを待っていた。
「遅いね大輔くん」
「何してるんだろう?」
そう話していると、パソコン室の扉が開き、大輔くんが入ってくる。
「遅かったね、大輔ぇ」
「ったく、嫌になっちゃうよ。いい加減解放してくりゃあいいのにさあ」
「何したの?」
京ちゃんは大輔くんにそう訊いた。
「へへっ、サッカーしてたらガラス割っちゃって。謝ってんのに許してくんねえんだよ」
「またですか」
伊織くんが呆れた様子で大輔くんを見る。何でそんなに割っちゃうかなあ。
「大輔くん、何度もやってるから……」
「うん」
タケルくんとヒカリちゃんは頷いた。
「ヒカリちゃんまで……!」
それを見た大輔くんがショックを受ける。私たちはそんな大輔くんの様子に、くすくすと笑った。ガラスも安くないんだから、少しは反省しないとダメだよ。
「じゃまあ、気を取り直して!」
京ちゃんの掛け声に私たちはD-3を構えた。
「デジタルゲートオープン! 選ばれし子どもたち、出動!」
デジタルワールドにつくと、昨日の街には赤い幼年期のデジモンがたくさんいた。
「なんだよ、こいつら?」
大輔くんは怪訝そうにデジモンたちを見つめた。
「にんげん、にんげん」
「おもしろーい!」
「あそぼあそぼー!」
デジモンたちはわらわらと私たちに擦り寄ってくる。くっ――可愛い……!
「にんげーん!」
「そうそう。人間だよ」
私はそのうちの1匹を抱き上げた。癒されるわな。
「あ、昨日の幼稚園!」
「直したから園児が戻ってきたがや」
「そんなの、あったか?」
伊織くんとアルマジモンの発言に、大輔くんは首を傾げる。
「はい」
「この子たちが園児なのですね」
「そっかあ。街を元通りにすれば、デジモンたちも帰ってくるのね!」
ホークモンと京ちゃんがそう言うと、デジモンたちは騒ぎ出し、ぴょんぴょんとその場を跳ねた。
「わーい!」
「元気だなあ」
「うるさいだけじゃん」
笑みをこぼすタケルくんに、大輔くんはそう言った。
「ふふ、かわいい……!」
ヒカリちゃんはそのうちの1匹を抱き上げると、しゃがんで頬ずりをした。それを見た大輔くんの顔がにやける。
「うん。かわいいよなあ」
「大輔態度変わりすぎ」
ブイモンが思わずツッコミを入れた。一瞬動揺した大輔くんだったが、気を取り直してD-3を掲げた。
「んじゃまあ、今日も張り切っていこう! 行くぞ、ブイモン!」
「ブイモン進化ー! エクスブイモン!」
しかし何故か、ブイモンは進化をしない。
「あれ?」
「何やってんだよ。もう一度行くぞ!」
大輔くんは再度D-3を掲げた。
「ブイモン!」
「おう!」
「ブイモン進化ー! エクスブイモン!」
でもやはり、ブイモンは進化できない。
「進化できないよ大輔ぇ……」
ブイモンは悲しげに大輔くんを振り返った。
「やる気がたりねえからだよ、びーっといけ! びーっと!」
「ブイモン進化あああ! エクスブイモオオオオン!」
何度試しても、ブイモンは進化しない。私たちは顔を見合わせ、ブイモンの近くに寄った。
「おっかしいなあ。昨日は進化できたろ?」
「どこか、具合でも悪いのですか?」
「ううん……」
大輔くんが不思議そうに首を傾げる。ホークモンもそう訊いたが、ブイモンは首を横に振った。
「お腹空いとりゃせん?」
「ついさっきも、菓子バリバリ食ってた」
「食べすぎ?」
大輔くんの返しに、京ちゃんはそう尋ねた。
「わかった! 最近戦ってないから運動不足なんだ! おまけに食ってばかりで! ダイエットだダイエット!」
しょげるブイモンの背中に大輔くんは抱きつく。その間に私たちは大輔くんの後ろで頷き合った。
「元気出せよ。じゃあアーマー進化してみっか?」
「ああいいよぉ。大輔たちは進化しなくて」
京ちゃんは大輔くんにそう言った。
「伊織、飛鳥くん! 私たちでアーマー進化ね!」
「はい!」
「おお!」
「何でだよぉ……って、ヒカリちゃんたち、どこ行くの?」
その大輔くんの言葉に、私たちは足を止める。
「ちょっと、昨日直したところ気になって」
「すぐ戻ってくるから」
「また後でねー」
「ヒカリちゃあん! 湊海ちゃんもおおお!」
引き止める大輔くんは京ちゃんたちに任せ、私たちは森の方へ向かった。