友達


『賢ちゃんへ

体は大丈夫?ご飯はちゃんと食べてるかな。食欲ないなら無理して食べなくていいけど、なるべくなら食べてほしいな。

……と、まあそれはおいといて。
こうやって手紙を書いたのは、私の気持ちを伝えたかったからです。

カイザーだったとき、私にハンカチ返してくれたよね。私、すっごくびっくりしたんだ。あんなくそダサくて最低でセンスないのに、返してくれるんだって。
あ、これはカイザーのことで、賢ちゃんのことを言ってるわけじゃないからね。賢ちゃんはとってもキュートだと思うよ!

だから、私思ったんだ。カイザーは……賢ちゃんは、優しいんだって。
デジモンは生きものだって気づいたとき、あんなに動揺するのは、本当に悪い人は出来ないよなあって。

賢ちゃんが私のことどう思ってるかはわからないけど、私は貴方と友達になりたいと思う。同じ選ばれし子どもの仲間として、一緒に頑張りたいって思うんだ。

そこでですね!まずはメル友になりましょう。お互いのことを知らないなら、これから知ればいいんだよ。

1番下にメールアドレス書いたから、良かったら送ってね。好きな食べ物の話とか、趣味とか!
あ、好きな人の話でもいいよ?私聞くのはとっても得意だから!


最後にこれだけ。飛鳥くんね、貴方のこと、とっても心配してたよ。
飛鳥くんは今、私たちと一緒にいるけど、1番一緒にいたいのは賢ちゃん。貴方だと思う。
そのことをわかってあげてね。飛鳥くんならきっと、貴方の全てを受け止めれてくれると思う。

私も、受け止めたいと思ってる。だから、私と友達になってください。連絡待ってます。


湊海より』



 飛鳥くんからのメールによると、賢ちゃんは私の手紙を受け取ってくれたようだ。そして今日、ワームモンが無事にデジタマから生まれたらしい。


「良かったね、賢ちゃん……」

「ええ……」

 自分の部屋でDターミナルを見ながら、私たちは微笑みあった。これで賢ちゃんも、少しは元気を取り戻してくれるだろう。


「賢さんはメール、送ってくれますかね?」

「どうだろう……。でも、私の気持ちは手紙に込めたから。これでダメだったら……」

 私はそこで口を閉じた。これでダメだったら、賢ちゃんはきっと、私と友達なんて――。そのとき、Dターミナルの着信音が鳴り響いた。慌てて操作をし、来たメールを見る。


『湊海さんへ

お手紙ありがとう。全部読んだよ。

……今日、ワームモンが生まれたんだ。今はリーフモンっていうんだけど。とっても嬉しかった。

飛鳥さんとお話もした。湊海さんの言う通り、とっても心配してくれていたよ。一緒に頑張ってほしいとも言われた。

でも僕、許されないことをした……わけじゃない?だから、飛鳥さんたちと一緒になんて、おこがましいと思ったんだ。

そう考えてたとき、湊海さんの手紙を読んだんだ。……湊海さんは、僕と冒険をしたわけじゃないし、ひどいことをいっぱいしてきたのに、こんなこと言ってくれるんだって……。正直、驚いた。

驚いたけど……嬉しいって思ったんだ。本当はダメなのに。僕も、湊海さんと友達に……なりたいって、思っちゃったんだ。

ハンカチ、2回も貸してくれたよね。カイザーのときの記憶は、正直なところ朧げなんだけど、それは覚えてる。きっと僕が……暖かいって感じたからだと思うんだ。湊海さんの心が伝わって……とても、暖かいなって。

好きな食べ物は、ママが作ってくれるハンバーグで、趣味は折り紙をすること。今度、一緒にやりたいな。
好きな人は……うーん、今はいないよ。だから湊海さんのお話の方、聞きたいな。

……僕こそ、お願いしていいかな。湊海さんと友達になりたい。飛鳥さんと、もう一度やり直したい。

こんな僕のワガママなお願い……聞いて、くれるかな?

賢より』


「賢ちゃん……」

 私はDターミナルをぎゅっと抱いた。――飛鳥くんの思いも、私の思いも、ちゃんと賢ちゃんに届いた。


「良かったですね。湊海様!」

「うん!」

 私はラブラモンに頷いた。ほら、やっぱり。賢ちゃんはとっても優しくて、いい子だった。

 ――正直なところ、これからが大変だと思う。私や飛鳥くんはともかく、タケルくんたちが賢ちゃんのことをすぐ受け止められるかというと……。難しいだろう。
でもそれなら――。私はメールの画面をじっと見つめた。私たちだけでも、賢ちゃんのことを考えなくてはならない。
だって賢ちゃんは、同じ選ばれし子供で……仲間だから。やっぱり賢ちゃんは、救える闇だったんだ。

 これから頑張らないと。私はぐっと拳を握った。


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