デジヴァイスが闇に染まる時

 復興作業の休憩時間。俺は隣で休んでいる湊海に声をかけた。

「じゃあ俺、また行ってくるな」

「あ、ちょっと待って」

 湊海はそう言うと、ポケットから何かを取り出し、俺に渡した。


「これ……」

 それは、賢宛の手紙だった。ピンク色の封筒に、綺麗な字で『賢ちゃんへ』と書かれている。うさぎのシールで封をされていて、まあなんというか――女の子って感じだ。


「はは、ラブレターか?」

「んもう、違うよ!」

 湊海は頬を膨らませ、俺の腕をぱしんと叩いた。これは、タケルくんがからかいたくなるのもわかるな。


「もし賢ちゃんに会ったら、渡してほしいんだ」

「……うん。わかったよ」

 俺は頷いて、手紙をしまった。ここのところ毎日はじまりの街に通っているものの、賢はおろかワームモンのデジタマも見つからない。本当にワームモンは生き返ってくるのか。賢はデジタルワールドに来てくれるのか――。現実世界で会いにいく勇気は、俺にはなかった。……でも、デジタルワールドで会えたなら、向こうの世界でも会いたいなと思う。デジタルワールド以外で賢と会ったことはほとんど無かったから。


「よー飛鳥、ロップモン。今日も来てくれたのか」

 はじまりの街に着くと、エレキモンが迎え入れてくれた。
はじまりの街もデジモンカイザーの影響が少なからず出ており、細々したところを少しずつ直していた。
この街にはエレキモンというデジモンがいて、賢のことを待つうちに仲良くなった。
俺たちは、はじまりの街に来るとエレキモンと一緒に、デジタマを撫でたり、赤ちゃんデジモンたちのお世話をしている。街もだいぶ直ってきたので、今はお世話が中心かな。


「うん。ところで新しいデジタマ、来てる?」

「おお、実はな! 今丁度ニンゲンが来て、ひとり生まれたぞ!」

「なんだって!?」

「こっちこっち」

 俺とロップモンは顔を見合わせ、エレキモンについていった。


「飛鳥が探してたニンゲンって、多分あれだろ?」

 大きな積み木の影から覗くと、そこには確かに賢がいた。黄緑の小さなデジモンを抱いている。――もしかして、あれはワームモン?


「ありがとう。エレキモン」

「飛鳥、行ってみましょう」

「うん!」

 俺たちは賢たちの方へ向かう。賢はこちらに気づくと、目を見開いた。


「飛鳥さん……ロップモン……」

「久しぶりだな。そのデジモンは……」

「リーフモンだよ、あすか」

 賢の腕にいるデジモン――リーフモンは、そう自己紹介をしてくれた。


「良かった。ちゃんと生まれてきてくれたのね……」

 そのリーフモンの様子を見て、ロップモンは息をついた。


「あの、僕……」

「ちよっと、話をしようか」

 俺がそう促すと、賢は静かに頷いた。



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