「皆さん!」
「伊織!」
私たちが急いで階段を降りていると、伊織くんと鉢合わせした。伊織くんのランドセルからは、ウパモンがはみ出ている。
パソコン室にたどり着くと、大輔くんが腕を組んで仁王立ちしていた。
「遅い遅い!」
「一体どうしたの?」
「飛鳥さん、気にしないで」
不思議そうに首を傾げる飛鳥くんに、ヒカリちゃんが苦笑いしながらそう言った。
「京さん、さっきから大輔くん機嫌悪そうだから早くゲート開いて」
「ふうん……」
京ちゃんはジロジロと大輔くんを見つつ、パソコンを操作した。
「大輔くん、どうどう」
「がるるるるるる!」
私が頭を撫でると、大輔くんは牙を向いた。……ふむ。どうやら相当怒ってるようだ。何があったんだ。
「デジタルゲートオープン! 選ばれし子どもたち、出動!」
そんな大輔くんのことはとりあえず置いといて、私たちはデジタルワールドに向かった。
「デジモンカイザーがいなくても、デジタルワールドに来れるんですね」
伊織くんの発言に、私はぴくりと反応した。――そう、だよね。D-3は確かにゲートを開くことができるが、カイザーがいなくなった今私たちは……。
「何言ってんの!」
顎に手を当て考え込んでいると、京ちゃんがあっけらかんとした様子で笑った。
「やっとデジタルワールドに平和が訪れたのよ? デジタルワールドを
楽しむのはこれからよねー」
『え……まあ』
京ちゃんのお気楽さに、タケルくんと伊織くんは顔を見合わせていた。京ちゃんのそういうとこ、好きだよ!
「ヒカリちゃんも、そう思うでしょ?」
「ええ、そうね」
「京の言う通りだけど、今日もデジタルワールドに、遊びに来たわけじゃないから」
大輔くんは機嫌を直したようで、真面目にそう言った。
「わかってる。デジタルワールド復旧作業の、ボランティア活動でしょ?」
「デジタルワールドがこんなに荒れちゃったの、俺たちにも少しは責任あるからな……」
私たちは周りの風景をじっと見つめた。カイザーが暴れ回ったデジタルワールドは、すっかり荒れ果ててしまった。建物も壊れてしまったし、森や畑だってめちゃくちゃになってしまった。そのため食物も足りていない。デジタルワールドは今、復興している最中だ。私たちはその手伝いをしている。太一さんたちも時間があるときは協力してくれており、少しずつだが前に進んでいる。
「京さん、デジタルワールドの被害状況は?」
「えーっと、Dターミナルで調べてみる。山岳地帯はと……」
京ちゃんはDターミナルを取り出し、操作を始める。
「ここは、僕たちが行こう」
「そうだね、タケル」
「湊海お姉ちゃんも、一緒に行こう?」
そう言って、タケルくんが私の肩をぽんと叩いた。
「いいよー」
「よし、山岳地帯はタケルたちに任せた」
「次は物資か……。ここも相当やられてる……」
「わー! いくいくいくだぎゃ! 伊織ぃ」
「あ、待ってアルマジモン!」
アルマジモンは何か楽しみがあるようで、1人で走っていってしまった。伊織くんが慌てて追いかけていく。――アルマジモン。ボランティア側の人は、普通ご飯食べられないよ?
「しまった、先を越された……!」
「次は田園地帯ね」
「そろそろ、俺の出番だな!」
大輔くんたちも行きたかったようだが、行ってしまったものは仕方ない。大輔くんは気を取り直し、田園地帯に行くことにしたようだ。
「待って!」
「え?」
「私も行きたい」
「そうね」
しかし、ヒカリちゃんとテイルモンも行きたいようで、大輔くんを引き止めた。
「よし、それならジャンケンで決めよう」
「わかったわ」
「最初はグー、ジャンケンポイ!」
結果はパーを出したヒカリちゃんの勝ちだ。
「ああ、負けたあ……」
「次は湖ですね」
「湖は俺とブイモンが行く!」
大輔くんはそう言うやいなや、走っていった。ヒカリちゃんとタケルくんも自分の持ち場へと向かっていく。
「残るは海岸地帯か……」
「京さん、私たちが行くしかないですね」
「俺も一緒にいくよ」
京ちゃんと飛鳥くんたちは海岸地帯に行くことになったみたいだ。
「わかったわ。じゃあ湊海ちゃん、またあとでね」
「頑張り過ぎるなよ」
「うん。2人もね!」
『了解!』
「湊海お姉ちゃーん、置いてくよー」
「今行く!」
2人を見送っていると、私を呼ぶ声が聞こえる。私は手を振って答えた。