賢ちゃんが現実世界に戻って数日経った日のこと。私はベッドの上でラブラモンと話をしていた。
「飛鳥くん、賢ちゃんにメール送ってるみたいだけど、返事来ないんだって……」
「彼も色々、思うところがあるのでしょう」
「うん……」
ここのところ飛鳥くんは、毎日はじまりの街に通っている。エンジェモンのときのように、その場にデジタマが現れなかったワームモンは、もしかしたらはじまりの街にいるかもしれない――と、私たちが伝えたのだ。今のところ賢ちゃんもワームモンのデジタマも見かけないようで、飛鳥くんは少し落ち込んでいた。
「……私も、賢ちゃんとお話してみたいな」
「……湊海様。今日はお休みになっては?」
「そうだね……」
私は電気を消して掛け布団を被った。飛鳥くんのメールを返さないくらいだから、きっと私の話なんて聞いてもらえない。……どうしたらいいのだろう。
そして翌日。私たちは理科の時間に、理科室で実験をしていた。京ちゃんは別の班になってしまったものの、飛鳥くんとは同じ班だ。
「試験管の液体をフラスコの液体に入れて混ぜるんだよね」
「そうそう。アルコールランプで液体を温めて、3分待つんだ」
私はノートを取りつつ、飛鳥くんに確認を入れた。うん。やっぱりこういう実験は楽しいな。
「湊海と橘くんの秀才コンビがいるから、私たち何もしなくていいわねえ」
「本当だぜ、同じ班になって良かったあ」
同じ班の子たちは机の上でだらけている。その様子を見た飛鳥くんな苦笑いを零した。
「おいおい、そんなこと言わずに手伝ってくれよ」
飛鳥くんはそう言いながら、試験管の中身をフラスコに入れる。
「いい感じ、かな?」
「多分ね」
フラスコを見守っていると、京ちゃんの班の方から変な桃色の煙が立っていた。何をしたらこうなるの!?
「やばーい!」
「まずい、離れろ!」
飛鳥くんの言葉に、みんな一斉に室内の端に散らばる。次の瞬間、爆発が起こった。
「けほっ、京ちゃん!?」
私は慌てて京ちゃんに駆け寄る。黒い煙が晴れると、髪がチリチリのまっ黒こげになった京ちゃんが現れた。
「ダメだこりゃ」
京ちゃんは煙を吐き出した。
「は、はは……」
私は乾いた笑いをした。――うん。よく生きてたよ。京ちゃん。