本当の君

 大輔たちと別れた後、賢を追いかけていく。先を歩いていたものの、ふらふらとした様子だったので、すぐ追いつくことができた。


「賢。送っていくよ」

「飛鳥……さん……」

 賢は懐かしい呼び名で、俺のことを呼ぶ。足を止め、こちらを振り向いた。


「なんで……」

「……今は、何も考えなくていい。帰ろう」

 俺は賢の手を取り、前へ進んだ。



「優しい賢に戻ってくれて良かったよ……」

 俺は自然と出てくる涙を拭い、そう話しかけた。さっき押し飛ばされたとき、もうダメかと思ったんだ。――でも、諦めないで良かった。いっぱい苦しい思いをしたけど、賢が戻って良かった。……ワームモン。君がずっと求めていた賢ちゃんは、今ここにいるよ。


「ごめんね……ごめんなさい……ありがとう……」

 賢は涙をぼろぼろと流しながら、俺の手を握り返した。――この温もりは、もう絶対に失わない。


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