「うわあああああ!」
どうやら不安定な場所だったようで、みんなで重なるようにゲートから出てくる。周りは森のようで、木々が生い茂っていた。
下で潰れている光子郎さんを救出し、私たちは太一さんたちの方へ向かった。辿り着くと、太一さんとヤマトさん、そして何故かジュンさんもいた。
「なんで姉ちゃんが来てんだよ!」
大輔くんは腰に手を当てそう訊いた。
「おっす!」
ジュンさんはプリンを食べてご満悦のようだ。一方の太一さんとヤマトさんは項垂れていた。ジュンさん、さすがのパワーである。
「そうか……飛鳥は一乗寺を送っていったんだな」
「はい」
私は荷物をしまうのを手伝いながら、太一さんにそう説明をした。光子郎さんにも伝えたところ、連絡を受け次第、ゲートを開いてくれるらしい。……疲れているだろうし、送ったらすぐに帰ってきてほしいな。
「ちょっとぉ!」
そう太一さんと話していると、ジュンさんがやって来た。
「何よ何よ、やっとあたしが来たのにもう帰っちゃうの?」
「俺たち疲れてへとへとなんだよ。勝手についてきたくせに、わがまま言うなよな。ふわあ、眠い眠い」
「うっそぉ……」
ジュンさんは不満を漏らしたが、大輔くんは欠伸をしながら適当にあしらう。キャンプを楽しみにしていたらしいジュンさんは、ショックを受けていた。
「しかし弱ったなあ。こりゃ全員乗れないぞ」
ヤマトさんのお父さんは後ろを振り返る。私も車に乗り込むと、確かに人数がいっぱいだった。
「あれ? 確かもう1台車があったって言ってなかった?」
「あ、ああ! もう1台は昨日帰っちゃったんだ!」
「おいヤマト、お前バスで帰れ」
「ええ!? マジかよ……!」
ヤマトさんのお父さんは、ヤマトさんにお金を渡した。ヤマトさん家の車なのに、不憫である。
「悪いな、ヤマト!」
「それじゃあ気をつけて!」
太一さんと光子郎さんは軽々しく言い放った。ひどい。
「お、おい! ちょっと!」
「じゃあ、あたしもヤマトくんとかーえろ!」
「ええええええ!?」
そう腕を組んだジュンさんに、ヤマトさんは変な顔で叫んだ。
「ヤマトくんのことは、あたしに任せて!」
「やっぱり、俺も乗せてええええ!!」
「じゃあねえ!」
ヤマトさんの渾身の叫びをスルーし、車は出発した。ヤマトさんを励ますように、クラクションが鳴らされる。ごめんなさいヤマトさん。でもジュンさん、面白くて良い人だから、そんなに嫌がらなくてもいいと思います。
少し走ると、私以外はみんな寝てしまった。すやすやと寝息をたてるラブラモンの頭を撫でる。
『それでは次のニュースです。5月から行方不明だった天才少年、一乗寺賢くんが、先程自宅で発見されました。3カ月も行方不明だった少年が、なぜ自宅で発見されたのかなど、今のところ詳細は不明です』
太一さんが音量を上げ、ラジオのニュースを流す。どうやら賢ちゃんは無事に家へたどり着くことができたようだ。飛鳥くんも光子郎さんがゲートを開け次第、戻ってくるだろう。私はほっと息をついた。良かった、家に戻られて……。
「とりあえず、デジタルワールドの危機は無くなったみたいだな」
太一さんはこちらを振り返りながらそう言った。
「ええ、本当……。飛鳥くんにゲートを開いてあげないと……。みんな頑張りましたよね」
「湊海もよく頑張ったな」
「私は何も……頑張ったのは大輔くんや、デジモンたちで……」
「馬鹿、お前たちみんなが頑張ったんだから、結果を出せたんだろ? 謙遜すんなって」
「……うん」
私は小さく頷いた。少しでも力になっていたら――それは嬉しい。
「湊海さん、寝ていいですよ。肩貸してあげますから」
「……ありがとう、ございます」
私はこてんと光子郎さんの肩に頭を乗せた。相当疲れていたようで、あっという間に瞼が重くなる。
これからがきっと大変だろうけど……。私は貴方と本当の意味の仲間になりたいよ。賢ちゃん――。そう思いながら、私は眠りについた。