思いの力

「待てよ、デジモンカイザー! 一乗寺、けーん!」

「……やっぱり、俺の力じゃ」

「何言ってんだよ。あいつの顔、見てないのか? 飛鳥さんの言葉は一乗寺の心に響いてるよ。大丈夫だって!」

 顔を伏せる飛鳥くんの背中を、大輔くんはぽんと叩いた。


「大輔……」

「だから、一緒にマグナモンを応援しようぜ。あんな化け物、とっとと……!」

「うわあっ!」

 すると再び爆発が起こり、要塞が揺れる。ホークモンは京ちゃんに呼びかけた。


「京さん! 私たちも脱出しましょう!」

「うん! だけど、疲れてるんじゃないの?」

「OKです、任せてください!」

「大丈夫よね、みんな!」

 テイルモンがデジモンたちに問いかける。


「うん!」

「だぎゃあ!」

「当たり前よ!」

「それじゃあ、お願い!」

 ヒカリちゃんの言葉に、デジモンたちは頷いた。みんなはD-3を掲げ、アーマー進化をする。

「ロップモン、アーマー進化! 奇跡の盾、メイルドラモン!」

 ラブラモンは飛べないので、もちろん進化はしない。項垂れるラブラモンの頭を私はぽんぽんと撫でた。仕方ないさ。デジモンによって、得意なことは違うもの。


「ゴールドラッシュ!」

 ディグモンが2回必殺技を放ち、壁に穴を開ける。


「湊海お姉ちゃんとラブラモンはネフェルティモンに!」

「大輔くんはぺガスモンに乗るんだ!」

「うん!」

「頼んだぞ!」

 私たちはデジモンたちに乗り込み、要塞を脱出した。私たちが脱出したすぐ後、要塞は地面に墜落し、砂に埋もれる。


「ひええ……危なかった……」

「ええ……」

 私たちはほっと息をついた。本当にギリギリのところみたいだ。


「エクストリームジハード!」

 マグナモンが攻撃を放ったが、キメラモンは唸るだけだ。マグナモンはそろそろ限界らしく、動きが一瞬止まる。その隙を狙って、キメラモンはマグナモンを掴んだ。


「まずい、このままだとマグナモンが……!」

「……飛鳥。私、行くわ」

 その言葉に、私たちはメイルドラモンの方を見た。


「メイルドラモン……」

「あの光を浴びてから調子がいいの。やれるわ。賢を……救けたいでしょ?」

「……うん。メイルドラモン、お願い」

「任せなさい! ホルスモン、飛鳥を頼んだわよ!」

「はい!」

 メイルドラモンは飛鳥くんをホルスモンに乗せ、キメラモンに向かっていく。私たちは地面に着地し、戦いの様子を見た。――そのときだった。マグナモンが何かに反応するように、光を放ったのは。デビドラモンの上にいるワームモンも同じ光を放っている。ワームモンの光がさらに強くなると、ワームモンは賢ちゃんを突き飛ばし、デビドラモンの上から落とした。


「ワームモン……!?」

「どうして……!」

 ワームモンはデビドラモンに乗り、キメラモンの元へと向かっていく。デビドラモンはキメラモンに体当たりをし、マグナモンは奴の手から逃れることができた。


「ワームモン……お前!」

「無茶するんじゃないわよ……!」

「賢ちゃんを、助けて……!」

 するとキメラモンはデビドラモンを突き飛ばした。そのまま衝動で落ちたワームモンを殴り、地面へ落とす。


「ワームモン!」

「お願いだよ、マグナモン、メイルドラモン。賢ちゃんを、助けて……!」

 ワームモンの光がマグナモンに向けて、真っ直ぐ放たれた。


「ワームモン!」

 飛鳥くんはスライディングしてワームモンをキャッチする。私もそちらに駆け寄った。ワームモンは息絶えだえの様子で、飛鳥くんを見つめる。


「飛鳥……賢ちゃんを……」

「……もちろんだよ。俺はもう、絶対に諦めない」

 飛鳥くんは勢いよく上を見上げた。


「メイルドラモオオオオン!」

 飛鳥くんの心に反応して、紋章は光り輝く。――動力室で見たものと同じ、黄金色だ。紋章の光はメイルドラモンに向かっていく。


「ワームモンのパワーが、俺の中に流れてくる……!」

「飛鳥の思いが……伝わるわ……!」

 突進してくるキメラモンに、マグナモンとメイルドラモンは立ち向かった。


「アイアンプレス!」

 メイルドラモンがのしかかると、キメラモンに触れている箇所から煙が出てきた。キメラモンは苦しそうに声をあげた。


「ぐぎゃああああ!」

「エクストリームジハード!」


 メイルドラモンが避けたのと同時に、マグナモンはかつてない光を放ちながら、必殺技を撃った。


「ぐおおおおおお!」

 その光に吸い込まれるように、キメラモンは消滅していった。ようやく……ようやく、倒すことができた。マグナモンとメイルドラモン、そして――ワームモンの力で。



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