「……ちょっと、私たちらしく無かったかな。タケルくん」
「そうかも。僕、パタモンたちがボロボロになっているのを見て……怖気付いちゃってた」
「タケル……」
タケルくんは心配そうに見上げるパタモンの頭を撫でると、私に笑いかけた。
「希望を忘れちゃダメだよね。湊海お姉ちゃん」
「うん!」
私は大きく頷いた。私たちがこんな状態で、京ちゃんや伊織くんが着いてきてくれるわけがない。大輔くんと飛鳥くんは、全てを受け持つように先へ進んでくれた。――ならここは、私たちが頑張らなくてはならないところだ。
「僕たちも行こう!」
「大輔くんたちを、追いかけなきゃ!」
「はい!」
「大輔たちだけに、良い恰好させられないもんね」
「本当突撃隊長なんだから……」
私たちは頷き合い、飛鳥くんたちが使った鎖のところへ走り出した。――そのときだった。
「キメラモン! 攻撃開始!」
「デジモンカイザー !?」
タケルくんが思わず叫ぶ。カイザーは私たちが来た反対側の壁の穴に立っていた。その命令でキメラモンがまた動き出す。
しかし、キメラモンは私たちをちらりと見ると、カイザーの言う事を聞かずに、どこかへ飛んでいってしまった。
「どこへ行くキメラモン!? キメラモン!」
賢ちゃんは必死にキメラモンを呼ぶが、奴は振り返らない。そのとき、誰かの低い声が辺りに響いた。
「ふっはっはっはっはっ……」
「この、声は……?」
タケルくんが小さく呟く。心の奥底を見透かされるような、不快で嫌な声だ。私は思わず眉をひそめた。一体これは――?
「賢ちゃん大丈夫? 賢ちゃん!」
「うるさい!」
その声を聞いたらしい賢ちゃんは、地面に膝をついていた。ワームモンが心配そうに呼びかけるが、彼はそれを一蹴する。
「闇の力を利用しようとして、逆に利用されたんだ、奴は……」
タケルくんは帽子を深く被り、そう呟いた。
「……賢ちゃん」
私はじっと賢ちゃんの方を見つめた。闇になんか呑み込まれないで。本当の貴方はきっと……。
「よし、今のうちに僕たちも一気に動力室へ!」
タケルくんの号令に、私たちは走り出した。しばらく走っていると、突然基地の中の電気が消える。私たちは周りを見渡した。
「やったな、大輔くん! 飛鳥さん!」
タケルくんが嬉しそうにそう言った。どうやら動力室に向かった大輔くんたちがやってくれたようだ。――よし、このまま基地の動きが止まってくれれば……!