「行くぞ!」
それを見届けたムースモンたちは、ライドラモンの掛け声で一斉に動き始める。
「よっしゃあ!」
荷物のところまでたどり着き、ムースモンたちの様子を見ると、みんなはバケモンたちを撃退していた。私たちは笑顔で、歓声をあげる。よし、このままいければ――!
「ああ!」
すると伊織くんが突然声をあげた。彼の方を見ると、空に指をさしている。そちらを見ると、円形になりぐるぐると回っていたバケモンが今にもこちらに襲いかかりそうだった。
「ゴールラッシュ!」
「ありがとう、ディグモン!」
そんな危ないところを、ディグモンはドリルで撃退してくれた。伊織くんが嬉しそうにお礼を言う。
その間にムースモンたちは、キメラモンの元へ向かっていた。それを見たキメラモンが、口からビームを放つ。バケモンたちは巻き込まれ、消滅していってしまう。ムースモンたちはきちんと避けたものの、そのビームの衝撃で壁に激突してしまった。
「なんてパワーだ!」
「ちゃんとよけたのに……!」
「味方に当たっても、関係なしか!?」
大輔くんたちが悔しそうに叫ぶ。私もぐっと拳を握った。――いつかのケルベロモンと、グリフォモンのようだ。この強さで成熟期は有り得ないから、恐らく完全体以上なのだろうが……。アーマー体で勝つのは、とても難しいだろう。私たちに――ムースモンたちに、できるのか……!?
ムースモンたちは体勢を立て直し、一斉に必殺技を放った。それは全て命中し、衝撃から煙がたつ。
「やったか!?」
――しかしキメラモンは傷一つ、ついていない。奴は余裕そうに再び咆哮をあげた。
「技が効かない!?」
「なんて奴だ……!」
ヒカリちゃんと大輔くんが呆然と呟く。こんな敵に、どうやって勝てばいいんだ。ラブラモンたちが完全体や究極体になれれば……という邪な感情を、首をぶんぶんと振って消し去る。デジタルワールドを守るために使われてるのだから、そんなことを言っても仕方ない。でもこのままじゃ、ムースモンたちは――。
「全員で攻撃しても、びくともしないなんて!」
「強い……強すぎます!」
「僕たちには、どうすることも出来ないのか……!?」
ムースモンたちはひたすらに避けていく。しかしビームに当たらなくとも、衝撃波で壁に激突し、ジリジリと体力を奪われていってしまう。
「このままじゃ、パワーを消耗していくだけだわ!」
ヒカリちゃんが悲痛な叫びをあげる。それを繰り返した後、ついにムースモンたちは退化してしまった。
「ラブラモン!」
私は思わず叫んだ。やっぱりキメラモンには敵わないんだ。こんなにボロボロになるまで、戦わせてしまうなんて――。
すると突然、キメラモンがぴたりと動きを止めた。私たちはその突然の出来事に、顔を見合わせる。
「キメラモンが、止まった……!?」
「どういうことだ……?」
タケルくんと大輔くんが呆然と呟く。
「今のうちにみんなを!」
「うん!」
ヒカリちゃんの言葉に、私たちはそれぞれのパートナーの元へ駆け寄った。
「ラブラモン、ラブラモン……!」
「湊海、様……」
私の顔を見ると、ラブラモンは悲しそうに眉を下げた。
「申し訳……ございません……。私が、力不足なばかりに……」
「そんなことない! 私にとっての1番は、ラブラモンだもん……!」
私はラブラモンをぎゅっと抱きしめた。私には傷ひとつ無いのに、ラブラモンはこんなにボロボロになっている。なんで私は、ラブラモンの痛みのひとつも肩代わりすることができないのだろう。ごしごしと目を拭いながら、大輔くんたちの元へ戻る。もう、これ以上は――。