強敵


 伊織くんは潜入が成功したことを光子郎さんにメールで伝えた。
洞窟の中を歩いていると、前方から光が漏れていた。


「次の入り口だ」

 大輔くんがそう呟く。私たちはその光の方へ進んでいった。


「な、何だあ……!?」

 中に入って周りを見渡すと、いつかのナノモンの部屋のような、機械がはびこる部屋に出た。壁は全て金属で出来ており、どことなく冷たい印象だ。
私たちはパートナーから降りて、様子を見ることにした。真ん中は大きな空洞になっており、天井までよく見えない。下を覗いても、奥深くまで続いていた。


「あれだ、あれが動力室だ!」

 タケルくんの指さす方向には、動力室があった。どうやら降りていかなくてはならないようだ。


「よーし、あそこに行けばこの、どでかいのが止められるんだな!」

 大輔くんは意気込み、私たちの方を振り返った。


「よし、行こう!」

 次の場所へ進もうと横を見ると、扉が開き、大量のバケモンたちがやってきた。もちろん、イービルリングを嵌めている。



「ひゃあ!」

「バケモンかあ……」

 私はこくりと頷いた。バケモンは成熟期だが、強いとは言えない。恐らく足止めに呼ばれたようだが、今の私たちなら――!


「随分大歓迎してくれますね」

「ほんと」

「でも……邪魔させるかあ!」

 伊織くんとヒカリちゃんが皮肉混じりにそう呟いた。大輔くんの号令で、ムースモンたちは一斉に必殺技を放つ。


「ホーンブレード!」

 ムースモンたちの攻撃でバケモンのイービルリングは外れ、へろへろと地面に這いつくばった。


「よし、急ごう!」

 私たちはパートナーに乗り、扉から脱出した。


 次に出たのは、とても広い空間だった。端の方に荷物が置かれている。


「ここは……?」

「格納庫みたいですね」

「サッカー場くらいあるなあ」

 大輔くんがまじまじと格納庫を見つめていると、突然天井にヒビが入り、地響きが起こった。私たちは思わず、周りを見渡す。


「あっ!?」

「な、何だ!?」

 そして息をつく間もなく、天井の穴からゆっくりと現れたのは――。


「キメラモン……!」

 キメラモンは私たちを見るやいなや、咆哮をあげた。その声に反応して、周りにバケモンも集まってくる。


「くっ……! 動力室まで、もう少しだったのに……!」

 タケルくんが悔しそうに呟く。


「大輔、降りて隠れてて」

「え?」

「キメラモンは強い。俺たち全員が力を合わせないと無理だ!」

 ライドラモンはキョトンとする大輔くんにそう促した。他のデジモンたちも、ライドラモンに続く。


「タケル、ここは僕らに任せて」

「ペガスモン……」

「心配しないで、ヒカリ」

「でも……」

「飛鳥、降りてちょうだい。私たち戦いに集中しなきゃ」

「メイルドラモン……」

「大丈夫だぎゃあ」

「京さん、早く!」

「湊海様も安全なところへ!」

「わかった!」

「任せたよ!」

「頼むぜ、みんな!」

 私たちはパートナーから降り、端にあった荷物まで走った。



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