私たちは崖の上から、遠くの街でキメラモンが暴れているのをじっと見つめていた。
「くそー、キメラモンのやつ! いつまであんなこと続けるつもりだよ!?」
大輔くんが悔しそうに呟く。
「恐ろしい奴だ……」
「何の意味もなく、ただ攻撃しとるがや」
「我々の、デジタルワールドが……!」
ライドラモンたちも複雑な表情を浮かべていた。
「全てを焼き尽くすまで、やめないつもりでしょうか」
「そんな……!」
京ちゃんは伊織くんの発言に、思わず声をあげた。――確かに、キメラモンは全く止まる様子がない。街には住んでいるデジモンがたくさんいるというのに……。私はぐっと拳を握った。これ以上見過ごすわけにはいかない。
「許せない……」
「あ……」
その声に、京ちゃんがタケルくんの方を見る。タケルくんは目に怒りを灯し、街を眺めていた。
「あんなデジモンを作り出すなんて、絶対に許せない!」
「何としてでも止めなきゃ。私たちの手で」
ヒカリちゃんもタケルくんに同調するように、力強く言った。
「でもどうやって?」
「今の僕たちじゃ、真っ向からキメラモンに挑んでも勝ち目はない」
「それは……」
ネフェルティモンとぺガスモンの言葉に、ヒカリちゃんたちは目を伏せた。
「私はこれ以上、デジモンが傷つくところを見たくない……。真っ向から敵わなくたって、方法はきっとあるよ。今までだってずっと、そうしてきたじゃない?」
「うん……。俺も、後悔したくないんだ。キメラモンは何としてでも止めないと……!」
「その通りです。湊海様。私たちは何としてでも、キメラモンに勝たなくてはなりません」
「そうね。泣き言言ったって始まらないわ。当たって砕けるくらいの勢いでいかないとね!」
「砕けちゃダメだよ、メイルドラモン」
「例えよ、例え」
メイルドラモンと飛鳥くんのやり取りにくすくすと笑っていると、テントモンがこう切り出した。
「でも奴ら、一体どこまで行く気でっしゃろうか」
「え……?」
伊織くんはキメラモンの進行している方向を見つめた。すると何か気づいたようで、慌てた様子でDターミナルを開く。
「あれは……!」
「どうしたの? 伊織」
「要塞の進行方向に、パイプラインがあるんです。もしかしたら何かに使えるかも……」
京ちゃんが訊くと、伊織くんは文字を打ちながらそう答えた。どうやら今は光子郎さんに作戦指示を仰いだようで、私たちは返信を待った。
少しした後に、Dターミナルの着信音が鳴る。伊織くんはDターミナルを開き、私たちに説明をした。
「アグモンたちが作戦に協力してくれるみたいです。僕たちも移動しましょう!」
どうやらパイプラインは、海底油田と繋がっているらしい。それをアグモンたちがタイミング良く放出し、炎でカイザーの基地を燃やすようだ。私たちはカイザーの基地が止まる予定の、崖の上まで来た。
作戦は無事に上手くいったようで、基地は私たちの前でぴたりと止まった。アグモンたち、ナイスだよ。
「よし、カイザーが気を取られているうちに突入してやる!」
「あそこが、要塞の入り口です!」
伊織くんが指差した場所には穴があいていた。私たちが入ったところと、恐らく同じ場所だ。
「行くぜライドラモン! うりゃああああ!」
大輔くんとライドラモンは間髪入れずに、その穴に飛び込んでいった。
「いっちばんのりー!」
「さすが大輔くん!」
得意げに笑う大輔くんに、私は拍手を送った。やっぱり可愛いなあ。
「突撃隊長には、うってつけだな」
「馬鹿なだけよ!」
「まあまあ、そう言うなって」
「ふふ!」
タケルくんと京ちゃんが呆れ顔でそう言うと、飛鳥くんは苦笑いで宥めた。ヒカリちゃんもくすりと笑い、大輔くんたちに続く。