いざ敵地へ


 そして翌日の早朝。


「湊海様……」

「んん……」

「湊海様、起きてください」

 ラブラモンにゆさゆさと体を揺らされ、私は目を覚ました。


「どうしたのラブラモン……まだ早いよ……ふわあ……」

 空はまだ薄暗く、起きるような時間ではない。私はあくびをしながら、ゴソゴソと寝袋から出た。


「タケルさんと伊織さん、もう準備してますよ?」

「へっ?」

 ラブラモンの話を聞くところによると、タケルくんと伊織くんはカイザーの基地を偵察することを決めたらしい。私が眠りこけている間にいそいそと準備をしていたようだ。


「ふたりだけなんて、私も行かなきゃ」

「そうおっしゃると思って、起こさせて頂きました。お眠りのところ、申し訳ありません」

「いやナイスだよ、ラブラモン!」

 私はラブラモンの頭をわしゃわしゃと撫でた。置いていかれないよう急いで衣服を整え、近くの川でバシャバシャと顔を洗う。ラブラモンの案内でタケルくんたちの元へ向かうと、出発直前のところだった。危ない。


「待って、私も行く!」

 その私の声に、タケルくんと伊織くんがこちらを振り返る。どうやらテントモンも一緒に行くようだ。


「湊海さん!」

「ふたりだけで行くなんて危ないよ。私もカイザーの基地気になるし、一緒に行こ?」

「湊海さんが一緒だと、僕たちも心強いです」

「もう、無理するから連れていきたくないんだけどな」

 伊織くんは素直に頷いてくれたものの、タケルくんは、苦笑いを零して私を見ていた。


「大丈夫、ラブラモンがいるから!」

「ええ。湊海様は私が必ずお守りします」

「……ま、それもそうか。じゃあみんなで行こう!」

『おー!』

 というわけで、私たちは海辺の方までやってきた。ぺガスモンは空、サブマリモンは海、二手に別れて探索するらしい。そして、ラブラモンは――。


「湊海様、本当に申し訳ございません……!」

 私に向かって、渾身の土下座をかましていた。まあ、確かにムースモンだとカイザーの基地には行けないが。何も土下座まですることはないと思う。


「仕方ないってラブラモン。前みたいにぺガスモンに乗せてもらおうよ」

「そうだよ。ほら、早く」

 タケルくんは項垂れるラブラモンを抱き上げ、ぺガスモンの上に乗せた。私もそれに続いてタケルくんの後ろに座る。


「湊海お姉ちゃん、しっかり掴まっててね」

「もちろん!」

 私はぎゅっとタケルくんの背中を掴んだ。


「……締めすぎ」

 力が強かったのか、タケルくんはこちらを振り返り、そう言った。


「ごめんごめん。ちょっと緊張してて」

「ふふ、湊海お姉ちゃんはやっぱり可愛い」

「こら、年上をからかわないの!」

 私はぺしっとタケルくんの足を叩き、前を向かせた。全く、最近のタケルくんはすぐ私をからかうんだから。


「伊織くん、行こう!」

「はい!」

 私の呼びかけに、伊織くんは頷く。


「出発だぎゃー」

 サブマリモンが進んだのと同時に、ぺガスモンも空へ舞い上がった。さて、これからが本番だ。頑張らないと――!



「……本気で言っても気づかないんだから。もう」



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