「ん……」
日が傾いてきた夕暮れ時。京ちゃんの膝で寝ていたホークモンが、ゆっくりと目を覚ました。
「京さん……」
「ホークモン、気がついたのね!」
「良かった……!」
「本当に!」
私たちとヒカリちゃんは顔を合わせて笑い合った。良かった、目が覚めて――!
「ごめんね、ホークモン……!」
「気に、しないでください」
「うん、うん……!」
私たちは京ちゃんとホークモンからそっと離れた。今はふたりきりにしてあげよう。すると森の中から、テイルモンとラブラモンが帰ってきた。
「見つけたよ。毒消し草」
「うん。でも……」
ヒカリちゃんは口の前に人差し指を立てた。
「ちょっと後にしよう?」
テイルモンたちは目をぱちくりとさせた。私たちは遠くから、抱き合う京ちゃんとホークモンをにっこりと見守っていた。良かったね。京ちゃん。
しばらくすると、辺りはすっかり暗くなっていた。ホークモンは体を動かすと、嬉しそうにこう言った。
「毒消し草って、すごい効き目ですね。すっかり、大丈夫です! ありがとう!」
「良かった!」
「ええ!」
テイルモンとラブラモンがにこりと笑った。そのときだった。頭上から変な音が聞こえた。
「なに、この音!?」
私たちは頷き合うと、岩に刺さっている電車の上にゆっくりと登った。
そこから空を見上げると、光り輝く巨大な物体が浮かんでいた。
「何あれ!?」
「あれは……」
京ちゃんが驚く横で、テイルモンが小さく呟く。
「あれがきっと、デジモンカイザーの基地なんだな!」
「やっぱり、空を飛んでたんだ!」
ホークモンは包帯をひゅるりと取った。
「京さん。ビンゴですね……!」
「うん……!」
私たちはカイザーの基地を見つめた。ひとりであそこまでの設備を作るなんて――。思わず息を呑む。使う方向性は間違っているが、カイザーは間違いなく有能だ。私たちだけで勝てるのか、あいつに。私はぐっと拳を握った。
でも、負けられない。デジタルワールドのためにも。飛鳥くんのためにも。――賢ちゃん自身の、ためにも。