その少し後、突然穴の方から悲鳴が聞こえた。
「うわあああああ!」
「京ちゃん!?」
私たちは顔を見合わせ、急いで穴の方へ向かった。
「ホークモン!」
「京、どうした!」
その穴を見下ろすと、ドググモンが京ちゃんとホークモンを襲おうとしていた。ホークモンは京ちゃんの腕の中で、ぐったりとしている。
「大輔!」
「おう! デジメンタルアップ!」
「ブイモン、アーマー進化! 燃え上がる勇気、フレイドラモン!」
フレイドラモンがドググモンの相手をしている間に、京ちゃんたちのロープを引き上げていく。
「ホークモン! ホークモン!」
京ちゃんが何度も呼びかけるが、ホークモンはぐったりとしたまま返事をしない。
「ホークモンしっかりして!」
私たちは力を合わせ、ロープを引っ張っていく。そして何とか、京ちゃんたちを穴の外まで引き上げることができた。
「ホークモン、ホークモン!」
京ちゃんはホークモンを揺らすが、全く目を覚まさない。
「ラブラモン!」
「……ダメです! 私の技は毒に効きません!」
私が呼びかけると、ラブラモンは首を横に振った。――そうだった。確か前のときも……。ラブラモンな悔しそうに拳を握りしめ、ホークモンを見つめる。
私たちは近くの森の中に向かい、ホークモンの治療をした。処置が何とか終わり、包帯を巻いたホークモンをゆっくりと寝かせた。
「ホークモン、大丈夫なのか?」
「ああ、なんとかな」
戻ってきたブイモンに、大輔くんはそう答えた。
「とりあえず、応急処置はしたけど……」
「意識が戻るまでは、安静にしていなくちゃ……」
テイルモンとヒカリちゃんが小さく呟く。ホークモンが目覚めるのを待たなければ。
「ホークモン、ホークモン……!」
京ちゃんは私の胸で、声を殺して泣いていた。――まさか来て早々に、ホークモンが傷ついてしまうなんて誰も思っていなかった。京ちゃんは責任を感じているようで、涙が収まらない。私はゆっくりと京ちゃんの頭を撫でた。少しでも気持ちが落ち着けばいいのだけど……。
「京さん……」
ヒカリちゃんも京ちゃんを心配して、声をかける。
「みんな……」
京ちゃんは私からそっと離れると、ゆっくり立ち上がった。
「みんな。あたしここに残って、ホークモンの看病をする。だから、みんなはカイザーの基地を探しにいって!」
「……だけどよ!」
「お願い! これ以上、みんなに迷惑かけられない……!」
京ちゃんは涙を流しながら大輔くんたちに訴えた。
「わかった。そうするよ」
タケルくんは立ち上がると、大きく頷いた。
「そうだな。俺たちは行くよ」
「はい」
大輔くんと伊織くんも、続けて立ち上がる。
「私は……残る」
「ヒカリちゃん……」
「また、デジモンが現れるかもしれないでしょ? だからボディーガード! ね、テイルモン?」
「任せて」
ヒカリちゃんとテイルモンは頷き合った。――とても、ヒカリちゃんらしい行動だ。
「私も残るよ。京ちゃんと一緒にいたいから」
「湊海ちゃん……」
私は優しく京ちゃんの頭を撫でた。こんな状態の京ちゃんを放っておく選択肢は、私にはない。
「俺も残ろうかと思ったけど、湊海とヒカリちゃんがいるなら安心だな」
「そうね。私たちは大輔たちと行きましょう」
飛鳥くんはこちらに近づくと、私にしか聞こえないくらいの小さい声で「頼んだぞ」と呟いた。私が頷いたのを確認すると、飛鳥くんは微笑んだ。そして京ちゃんの背中をぽんぽんと撫で、大輔くんたちの方へ向かっていく。
「わかった。じゃあ、何かあったらメールで連絡を取り合おう。居場所はD-3で。もし日が暮れてもまだ基地が見つからなかったら、戻ってくるよ」
「うん!」
タケルくんの提案に、私たちは頷いた。今は連絡手段があるから、離れても少し安心だ。
「じゃあ、行ってきます!」
「気をつけてな!」
「大輔くんも!」
「よーし、頑張るぞ!」
『おう!』
私たちは大輔くんたちを見送った。頑張ってね、大輔くん。みんな。