私たちは家に帰った後、いそいそとキャンプの準備をした。お父さんとお母さんに話したところ、ふたつ返事で了承してくれた。恐らく色々と気づいているだろうが、何も聞かれなかったので、余計なことは言わないことに。
何日かは絶対家に帰れないし、気を引き締めて頑張らないと。
「湊海様、準備は終わりましたか?」
「うーんと……。食べ物や飲み物は入れたし、寝袋も準備オッケー。あとは……」
リュックの中身を確認していると、テレビのニュースが流れた。
『それでは、未だに行方がわからない、天才少年一乗寺賢くんのご両親にお伺いしたいと思います』
「いち、じょうじ……?」
その人物の名前に、私は顔をあげてテレビを見た。
『あの子は帰ってきます。あの子はどこかで生きていると信じています』
『あの子は……賢ちゃんは、本当は優しい子なんです……!』
賢ちゃんのお父さんとお母さんは涙を流しながらそう語っていた。本当は、優しい子――。カイザー……賢ちゃんは、両親がこんなに心配していることに気づいているだろうか。……多分、何もわかっていないと思う。この前話したときが、そうだったから。賢ちゃんは、いつになったら本当の賢ちゃんになるんだろう。まさかあの姿が、本性――というわけじゃないよ、ね。
「……早く何とかしないと」
私は小さく呟いた。デジタルワールドはもちろんのこと、一乗寺賢……私は貴方も、救いたいと思ってる。