そして、翌日の8月1日。私たちは近所の大きな公園に集合した。
「8月1日っていうのは、3年前の1999年の夏……」
「あっ、わかりました! 太一さんたちが、初めてデジタルワールドに行った日ですね!」
タケルくんの言葉を遮り、伊織くんがぽんと手を打った。
「私はまだ留守番していたけど……」
「ヒカリちゃんは、あのとき風邪でキャンプを休んだからね」
「僕とタケルが初めて会ったのが、今日なんだ!」
タケルくんの膝の上で、パタモンは嬉しそうに言った。
「湊海様と私が、初めて出会った日でもあります」
「ふふ、そうだね」
私はラブラモンの頭を撫でた。3年前の今日。私たちはパートナーと出会った。あの冒険は、楽しいこともたくさんあった。――でも辛くて、苦しいときもあった。そんなときに助けてくれたのは、やっぱりラブラモンだ。
まさか3年後に現実世界で一緒にいられるなんて、夢にも思っていなかったけれど。私は日々、その幸せを噛み締めている。ラブラモンといられるのは、決して当たり前のことじゃない。
「なるほど……」
「いきなりデジタルワールドに飛ばされたんだろ? みんな、よく頑張ったよな……」
京ちゃんはこくりと頷いて私たちの話を聞いた。飛鳥くんも眉を潜ませながら、私たちを労わる。
「おーい!」
その声に、私たちは顔をあげた。
「あ、太一さんたちだ!」
大輔くんは嬉しそうに、太一さんたちに手を振った。
「お前たちも来たんだな!」
「はい!」
「ミミさん!」
「はぁい!」
ミミさんはひらひらと可憐に手を振った。どうやら今日のために帰ってきてくれたらしい。
もしかしたら来られないかも、とメールで言っていたので、本当に良かった。
「みんな、元気だった?」
「こうして全員で集まるのは久しぶりねえ!」
丈さんと空さんは笑みを零した。この前メールに気づかなかったので、空さんに会うのは久々だ。空さんも元気そうで何よりです。
「そうか……!」
「そうなんだ。今日は僕たちの記念日なんだ!」
伊織くんは気づいたようで、目を大きく見開く。タケルくんはにこやかにそう説明した。
私たちは大きな木の木陰で、3年前の冒険の話をした。今までも少しずつ話してきたものの、あくまでそれは私やタケルくん、ヒカリちゃんの視点の話。太一さんたちから具体的な話を聞いたことがなかった大輔くんたちは真剣に話を聞いていた。
それは、1日で語り尽くせるものではなかったけれど。私たちは一生懸命話した。
もちろん、お台場に戻ってきたときの話もした。大輔くんがヴァンデモンに捕まったとき、裏でどんなことが起きていたか。飛鳥くんがラブラモンの進化を目撃したとき、他のみんなは何をしていたか。――ウィザーモンのことも、話した。
お台場での一連の出来事は、みんなの記憶にも新しいようで、興味深々の様子だった。
そして気がつくと、辺りはすっかり夕暮れになっていた。屋台船を見ながら、大輔くんたちはぼーっとしている。
「4人とも、どうしたの?」
ヒカリちゃんは大輔くんたちにそう尋ねた。
「一度にたくさんの話を聞いて、なんだかあてられちゃったと言いますか……」
「なんかお腹いっぱいって感じ……」
「もう何話されても、頭入らねえ……」
「話聞くだけで、大変というか……」
「もう、頼りないわね」
そんか大輔くんたちの様子に、空さんは腰に手を当て、苦笑いを零した。
「今度は、お前たちが頑張る番だろう?」
「……そうかぁ」
「大丈夫なのか?」
太一さんとヤマトさんは、項垂れる大輔くんに声をかけた。
「ダメかも……」
「しっかりしてくれよ!」
そう呟いたのは京ちゃんだったが、なぜか丈さんは大輔くんの背中を思いっきり叩いた。
大輔くんが転びそうになるのを見て、私たちは思わず笑う。大丈夫だよ、大輔くんたち。私たちと一緒にこれからも頑張ろうね。