救出

 しばらくすると、音を聞きつけたらしい大輔くんたちが、私たちの元へ降りてきた。


「タケルくん、湊海お姉ちゃん。何してるの?」

「うん。デジメンタル、どうもこの下にあるみたい」

 ヒカリちゃんの質問に、タケルくんはそう答えた。


「こんなときに、デジメンタルはねえだろ!」

「そうだね。そうだけど、何もせずに待ってるだけじゃ、時間がもったいないじゃない?」

「その通り! 残りのデジメンタルは誠実。きっとこれは、伊織くんのものだよ。頑張ってくれている伊織くんのためにも、私たちが踏ん張らないと! ね?」

 大輔くんの呆れ顔に、タケルくんと私はそう返した。私が笑いかけると、京ちゃんたちは大きく頷いてくれた。


「京さん、あたしたちも手伝いましょう!」

「ええ!」

「俺たちもやろう、ロップモン!」

「当然よ!」

「みんなでやりましょう!」

「うん!」

「そうだぎゃ!」

 こうして私たちは、全員で地面を掘り始めた。岩を運んだり、どかしたり、重労働は大変だったが、みんなで協力して頑張っていく。
そして、ようやくデジメンタルが姿を表した。表が白に裏が紺なそれは、しっかりと誠実の紋章が刻まれていた。


「私のじゃない」

 ヒカリちゃんは持ち上げようと力を込めた後、そう呟く。デジメンタルは全く動かなかった。


「じゃあやっぱり、伊織くんのだ!」

 タケルくんが嬉しそうに笑う。


「ということは、これで俺が新たなるアーマー進化を……!」

「でも、どんなアーマー進化するんだろう?」

「そりゃあ決まっとるがや。きっと……」

 アルマジモンを皮切りにして、大輔くんや京ちゃんたちも、進化形態を予想した。それが面白かったのか、みんなで大笑いする。私はその様子を見て、小さく笑った。



「みんな笑ってるよ!」

「アルマジモンの伊織さんを信じる気持ちを、京さんたちもわかってくれました」

「よかった!」

「……でも、みんな疲れてる。無理に笑ったりしてなんとか理性を保とうとしているが、肉体的にも精神的にも、もうそろそろ限界ね……」

「飛鳥、ずっと頑張ってるから辛そう……」

「湊海様も……」

 デジモンたちは心配そうに、私たちの方を見た。私は大丈夫だとひらひらと手を振ったが、肉体労働をしたこともあり、結構疲れている。
伊織くん、無事に助けを呼べたかな。途中で捕まったり――なんてこと、されてないよね……?



「ごほっ、ごほっ、」

 すると京ちゃんが咳き込み、ふらついてしまった。近くにいたヒカリちゃんと私は、慌てて京ちゃんを支える。


「だ、大丈夫? 京さん!」

「力仕事して疲れたんでしょ? ゆっくり座って……」

 そう声をかけると、京ちゃんは急にぐいっと窓の外を見つめた。


「ま、まさか、錯覚?」

 私たちも顔を見合わせ、窓の外を覗く。黒い影が近づいてきたと思うと、それは――。


「イッカクモン!」

「イッカクモンが助けに来てくれたわ!」

「さすがイッカクモン! かっこいい!」

 私たちは歓声をあげた。伊織くん、やっぱり丈さんを呼んでくれたんだ!
 しかし、喜んだのもつかの間、イッカクモンはメガシードラモンに体当たりされ、飛ばされてしまった。


「イッカクモン!」

 更に攻撃を食らったイッカクモンに、大輔くんは私たちを押し退け、身を乗り出す。
 イッカクモンは海底で体勢を立て直し、ミサイルを発射した。見事それが直撃し、メガシードラモンは怯む。


「いいぞー! その調子でイービルスパイラルを狙え!」

 しかし、次の一撃は外れてしまう。その上、気を取り直したメガシードラモンの放った電流が、イッカクモンに当たってしまった。


『イッカクモン!』

 私たちがそう叫んだ途端、上から滝のような水が降ってきた。びしょ濡れになってしまい、思わず声をあげる。


「うわあっ!」

「な、なんだ!? どうしたんだ!?」

 顔を拭いて上を見上げると、そこには壁を突破ったホエーモンがいた。まさか、このホエーモンは――!


「みんな、助けに来たぞ!」

「早く、ホエーモンの口の中に入ってください!」

 ホエーモンが口を開けると、丈さんと伊織くんが中に入っていた。そんなふたりの姿を見て、私たちは安堵の笑みを零した。


「伊織!」

「丈!」

「ほら、俺の言う通りだったぎゃ!」

「全くだぜ、伊織様々だ!」

 大輔くんは嬉しそうにアルマジモンの頭を撫でた。



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