翌日。私たちは小学校から直接、光子郎さんの家へ向かった。
「今日来てもらったのは、あることを実験するためです」
「実験、ですか?」
光子郎さんのお母さんが持って来てくれたジュースを飲みながら、私はそう聞き返した。
ラブラモンたちは、大人しくベッドの上に座っている。
「ええ。デジタルワールドと、この世界を繋ぐゲートのことで……」
その言葉にパソコンを見ると、いつものゲートの画面が開かれていた。
「飛鳥くん。カイザーは自分の部屋から、デジタルワールドに行っていたんですよね?」
「はい。俺も一応……」
「でもゲートを開けるのは、カイザーだけだった」
光子郎さんの確認に、飛鳥くんはこくりと頷いた。
「だ、だけど、ゲートはあのパソコン室のパソコンでしか、開いたことないですよ? 前に確認したときだって……」
「そうですね。ですから僕も、最初はあのパソコンだけだと思っていたんですが……」
私が動揺しながらそう言うと、光子郎さんは椅子から降り、私たちの前に座った。
「飛鳥くんの話を聞く限りでは、パソコン室のパソコンや、カイザーのパソコンにだけ、ゲートを開く力があるわけではないと思うんです。そうですよね?」
「……賢の話だと、彼の持っているD-3自体が、ゲートを開く能力がある……みたいです」
その飛鳥くんの言葉に、私は目を見開いた。そういえば、前もそんな話をしていたが――。それ以外の要素が多すぎて、聞き逃していた。
「……ということは、私たちはデジタルワールドから呼ばれなくても、ゲートが開いてなくても、ゲートを開けて行くことができる、ってこと?」
「恐らく」
私の疑問に、光子郎さんは頷いた。
「湊海さん、ゲートを開いてみてもらえませんか?」
そう光子郎さんにお願いされた私は、ゆっくりと立ち上がり、パソコンの前にD-3を構えた。
「……デジタルゲート、オープン」
私がそう呟くと、ゲートはしっかりと開いた。思わず、画面をじっと見つめた。
「で、できた……」
「俺も、話には聞いていたけど……。本当に出来るんだな……」
私と飛鳥くんは顔を見合わせた。今までもパソコンからデジタルワールドに行ったことはあったが、どれもゲートが開いているときだった。まさか、自分がゲートを開くことができるなんて――。
「僕の想像した通りでした。ただ、確信を得たかったので、飛鳥くんと湊海さんに協力してもらいたかったんです」
光子郎さんは、ほっとした様子で肩を降ろした。
「なるほど。だから俺たちを呼び出したんですね」
「はい。もう少し調べた後、他の皆さんにも知らせたいと思います。これで活動の幅を広げることが出来ますから」
「わざわざ休みの日に、学校に忍び込まなくてもよくなりますもんね」
「それに夏休みだと、お盆は学校が閉まってしまいますから。この実験は大切なものでした。今日わかって良かったです」
どうやら、私たちはD-3とゲートの関連性について調べるために呼ばれたようだ。以前の私たちのデジヴァイスでは、ゲートが開かなかったのも納得がいく。D-3だけの特権――のようなものか。
光子郎さんは、もう少し確証を得るため、私と飛鳥くんのパソコンからもデジタルゲートを開く実験をして欲しい、と頼んできた。みんなに伝えるのはその後にするらしい。