どこか歌舞伎の人に似たような口調に、忍者のような見た目。手の部分は手裏剣になっている、The・日本というような感じのシュリモンは、ホークモンの進化として合っている気がする。――ホークモンの原形はないけど、かっこいい。
「紅葉おろし!」
シュリモンは腕を伸ばし、手裏剣をデジタマモンに当てた。しかしまたもやデジタマモンが殻にこもったため、その攻撃は弾けられてしまう。
「そんな攻撃は全く効かないね! ナイトメアシンドローム!」
デジタマモンの中から、本体のような黒い物体が飛び出す。シュリモンは足のバネを使って飛びながら、声をかけた。
「フレイドラモン、ムースモン、ディグモン! これを頼む!」
「任せろ!」
ムースモンたちは3人がかりでその黒い物体を抑え込む。私たちの目の前ギリギリまで来たそれは、少し気持ち悪かった。
「ん? そういうわけか……。草薙!」
シュリモンはデジタマモンの顔に目掛けて手裏剣を飛ばした。
「皆さん!」
『任せて!』
いつの間にか戻っていたぺガスモンたちは、デジタマモンを拘束した。
『サンクチュアリーバインド!』
ぺガスモンたちの光の縄により、デジタマモンは足を掴まれ、空中に逆さまになって浮かんだ。
「イービルスパイラルは殻の中だ! 紅葉おろし!」
シュリモンは再び、手裏剣をデジタマモンの中に突っ込む。手裏剣を取り出すと、デジタマモンは咳き込みながら、イービルスパイラルの欠片を吐いた。
「イービルスパイラルを吐き出したぞ!」
「やったね、シュリモン!」
京ちゃんは嬉しそうに笑った。
「ぼ、僕は……?」
「デジタマモン、大丈夫?」
気がついたデジタマモンに、ミミさんが声をかけた。
「僕を助けてくれたんですか?」
「そう、京ちゃんがね」
「ええ? あ、あたし……?」
「京さん、ありがとう」
デジタマモンは京ちゃんに向かって笑顔でお礼を言った。
「そんな、やだ照れるじゃない……。でも、あんたのこと嫌いなんて言って、ごめんなさい……」
「いいんです、気にしないで下さい」
「あたし、これからはもっと素直になるわ」
「大丈夫、もう十分素直ですよ」
「そ、そう?」
京ちゃんは恥ずかしそうに笑うと、ミミさんに声をかけた。
「ミミお姉さま! これもみんなミミお姉さまの純真の紋章のおかげです! あたし、しっかりと受け継いでいきます!」
「うん、頑張ってね」
ミミさんもすっかり大人びて、お姉さんになったなあ。かっこいいし、美人だし、憧れるのも当然だ。
4年生のときのミミさんも可愛かったけど、今のミミさんもすごく素敵だ。
「おねーさぁん!」
「ん?」
腕を指でつつかれたミミさんは、そちらを向く。そこには、スカモンがいた。簡単に言うと、金色のうんちだ。
「デートしてくれないー?」
「あんたはいやあああ!」
ミミさんは間髪入れず、スカモンを遥か彼方までぶっ飛ばしていった。流石ミミさん。ヌメモンやらスカモンやら、そういう変なデジモンに好かれる天性の才能がある。対応も慣れたものだ。
「あはっ、やっぱりミミお姉さまは一味違う!」
みんなが呆気にとられる中、京ちゃんは目を輝かせていた。京ちゃんがいいなら、いっか。
気づいたら、辺りは夕焼け色になっていた。太陽がもう、沈みかけている。
「きっといつか、また一緒に活躍する日が来るよな」
「はい。そのときまでに僕たちも、もっと強くなってます」
大輔くんとマイケルくんは、力強く頷き合った。
「さ、マイケル。そろそろゲートが閉じる時間よ」
「えっ、もう? もっと色々なお話したかったのに……」
京ちゃんは残念そうな様子でそう呟く。
するとマイケルくんが京ちゃんに向かって右手を差し出した。
「See you again,ミヤコさん」
京ちゃんは頬を緩めると、マイケルくんの手を握った。よかったね。
「ばいばーい!」
「ばいばーい!」
京ちゃんはミミさんたちの背中に向かって、大きく手を振っていた。
「……またね」
「私たちも帰ろ、京ちゃん」
小さく呟いた京ちゃんの肩を、私はぽんと叩いた。
「ええ!」
そう笑った京ちゃんの笑顔は、きらきらと輝いていた。私たちもこれから、いっぱい頑張ろうね。