そう和んでいたそのとき、突然地響きが聞こえた。店の方まで揺れている。
「なに!?」
「湖の方からだ!」
私たちは慌てて店の外へ飛び出した。
「あそこだ!」
大輔くんが指をさした方には、何やら揺れている木々があった。そこから出てきたのは――。
「ゴリモンだ!」
マイケルくんが叫ぶ。ゴリモン――ってことは……!
「お客さん!」
「え? なんの?」
大輔くんが首を傾げる。間違いない。やっぱり、エビバーガーモンの村に来ていたお客さんだ……。どうしてこんなところに――!?
「イービルスパイラル!」
ヒカリちゃんの声に、私はお客さんを見た。腕にはイービルスパイラルがしっかりと嵌められている。
「でも、イービルスパイラルって完全体に使うんじゃなかったのか?」
「成熟期デジモンにも使うということは、かなりの数があるんじゃないでしょうか」
大輔くんの疑問に、伊織くんがそう返す。そうこうしている間に、ゴリモンは腕を構えた。
「危ない!」
発射された瞬間、店の中からデジタマモンが飛び出してくる。
「デジタマモン!」
デジタマモンは身を丸めて私たちを庇うと、屋根を突き破り、ゴリモンに吹き飛ばされてしまった。
「ゴリモンめ!」
大輔くんがお客さんを睨む。そのままD-3を構えると、ブイモンの方を向いた。
「ブイモン!」
「ここは僕らに任せて下さい!」
やる気満々の大輔くんを制し、マイケルくんはデジヴァイスを構えた。
「ベタモン!」
「OK!」
ベタモンは頷き、湖の中へ入っていく。水面には緑色の光が浮かんだ。
「ベタモン進化ー! シードラモン!」
ベタモンは進化すると、シードラモンになるのか――!
シードラモンは、飛びかかって来たゴリモンを受け止め、水中に引きずり込んだ。
「水の中だったらこっちのもんです!」
マイケルくんはぐっと拳を握った。
しかし、状況はあまり良くないようだ。水しぶきや戦闘の光は見えるものの、シードラモンは中々湖の中から出てこない。
「シードラモン……!」
「パルモン、シードラモンを助けて!」
「任せて!」
心配そうに呟くマイケルくんに、ミミさんとパルモンは頷き合った。
「パルモン進化ー! トゲモン!」
トゲモンは湖から出てきたお客さんに狙いを定めた。
「チクチクバンバン!」
そのままお客さんの腕に嵌っているイービルスパイラルに向かっ、てパンチをし続ける。衝撃を受けたイービルスパイラルは、無事に破壊された。
「ナイス、トゲモン!」
「シードラモン!」
ミミさんとマイケルくんは嬉しそうに歓声をあげる。
「お客さん!」
「キュアリークル!」
私たちはお客さんに駆け寄った。腕しか狙っていないから大丈夫だとは思うが、地面に倒れ込んでしまったので心配だ。
ラブラモンが光を当てると、お客さんはゆっくりと起き上がった。
「俺は……?」
「イービルスパイラルに操られてたのよ」
ミミさんがこちらに来ながら、そう説明した。
「手荒なことしてごめんね。でも仕方なかったのよ」
「お客さん、大丈夫?」
私が声をかけると、お客さんは目を見開いた。
「お嬢ちゃんあのときの……そうか。こっちに戻ってきたんだな?」
「うん。ちょっとやらなきゃいけないことがあって」
「エビバーガーモンたち、寂しがってたぞ。近いうちに行ってやったらどうだ?」
「……うん。全部片づいたら必ず行くね」
「私もお供します」
私とラブラモンが頷いたのを見て、ゴリモンは満足そうに笑った。
「そうね。あなたは、あなたがいるべき場所にお帰りなさい」
「すまない……。迷惑をかけたな。じゃあ、また」
「またねー!」
私たちは手を振り、お客さんの背中を見送った。エビバーガーモンの村――カイザーのことがひと段落したら、行ってみようかな。
「イービルスパイラルを外せば、決して悪いデジモンじゃないのに……」
「そうよ、初めから悪いデジモンなんていないんだわ。全てはイービルスパイラルがいけないのよ」
パルモンが悲しそうに呟くと、ミミさんが怒りを抑えきれない様子でそう答えた。
「ミミさん……」
「マイケル、これがこの前話した、デジモンカイザーの仕業なの」
「デジモンカイザー……。僕たちと同じ子どもがこのデジタルワールドを支配しようとしているなんて、間違ってる!」
「でも事実さ」
「マイケルって、かっこいい……」
マイケルくんの最もな意見に、大輔くんはそう返す。京ちゃんはそんなマイケルくんを見て目を輝かせていた。ここ、真面目なとこだよ京ちゃん?
「へ? 何か言った?」
「なーんにも……あ、デジタマモンは?」
その京ちゃんの言葉に私たちは辺りを見渡す。先ほど庇ってくれたデジタマモンは吹き飛ばされてしまったため、周辺にはいない。
「そうだわ! さっき私たちを庇って、きっとどこかで傷ついているに違いないわ!」
「じゃあ僕たちで、上から探してみるよ」
「そうだな。ヒカリちゃんも一緒に行こう」
「ええ」
タケルくんとヒカリちゃんと飛鳥くんは、パートナーをアーマー進化させ、空へと飛んでいった。これで見つかればいいのだけど。