「みんなどこかで関係があったのね!」
「縁って不思議ね……」
ミミさんとパルモンがしみじみとそう言った。当時は余裕がなかったが、こうやって大輔くんたちがパートナーデジモンと出会えたことを考えると、頑張った甲斐があったな、と思う。
「あのぉ、皆さんで思い出に浸っているところ恐縮なんですが……」
そんなことを考えていると、デジタマモンがおずおずといった様子で、私たちのテーブルまでやってきた。
「Oh! すみません! 今お金払いまーす!」
マイケルくんは立ち上がり、財布を取り出した。ちなみに日本円でいいなら払うといったところ、やんわりと「ここは僕に任せてください」と断られた。京ちゃんがほの字になるわけである。
「そうだ! デジタマモンって確か……お兄ちゃんと丈さんがここで働かされて、ヴァンデモンの手先になってた、デジタマモンにやっつけられそうになったんだ……」
タケルくんは思い出したようで、一気にそう説明した。そのタケルくんの言葉に、私も記憶を取り戻す。
「ああ! あのときの意地悪なデジモン! ガルルモンが進化したからどうにかなったけど、本当に大変だったんだよ!」
「うん。僕の代わりに丈さんも捕まっちゃったしね……」
タケルくんと私は顔を見合わせて苦笑いをした。いやあ、でもあのときの丈さんかっこよかったなあ。その丈さんと私は今、同い年である。もっとしっかりしないと、ね。
「じゃあ、悪いデジモンの手先だったの!?」
「いやいや、昔は確かに僕もかなり荒れてたんですがね? ダークマスターズが倒されてからは、真面目に地道に生活しているんですよ」
京ちゃんの驚いた様子に、デジタマモンはそう答えた。
「心を入れ替えて頑張っているのね」
「その調子で、これからも頑張ってね」
「はい、お嬢さん方にそう言って頂けると、僕も励みになりますよ」
ヒカリちゃんとミミさんに激励され、デジタマモンは嬉しそうに頷いた。そりゃこんな美少女ふたりに励まされたら、誰でも笑顔になる。羨ましいぞ、デジタマモン。
「ダークマスターズって何? あたしそんなの知らない」
「あたしたちのときに戦った相手のことよ。湊海ちゃんやタケルくんやヒカリちゃんから聞いたことない?」
「いえ、全然……」
「まだ、そこまでは話してなかったなあ……」
「そうだね」
私はタケルくんに頷いた。京ちゃんや大輔くんたちには、私たちの体験を少しずつ話しているものの、まだ全部を話すには程遠い。
それに、ヒカリちゃんは途中からの参加なので、主に話すのはタケルくんと私、ということになる。そうなると、どうしても辛いことは話しづらい。未だにデビモンとの戦いのことは話せてないし……。エテモンの話とかは笑いながらできるのだけど。難しいところだ。
「もうあのときのことは思い出したくもない……」
デジタマモンは辛そうに目を伏せた。あのときデジタルワールドはめちゃくちゃになったし、このレストランも大変だったんだろうな。ドルを持ってない客には厳しいものの、根は悪いデジモンじゃなさそうだ。デジモンカイザーと手を組む、なんてことはしてないみたいだし。
「ま、わかってくれる人ばっかりじゃありませんけどね……!」
「そんなことないわ! みんなわかってくれるわ! ね、京ちゃん?」
「え? はあ……」
デジタマモンの投げやりな言葉に、ミミさんはそうフォローをした。話を振られた京ちゃんは戸惑い気味に頷く。
「そうだね。たとえわかってもらえなくても、自分さえしっかりしていれ、ばいいことだよ」
「誰もわかってくれなくても、自分さえしっかりしていれば……なるほど、全くその通りですね! 頑張ります、皆さんありがとうございます!」
デジタマモンはタケルくんの言葉を復唱すると、笑顔でそうお礼を言った。笑った顔は少し可愛い。
「ミミさん、君の素直に信じる心は人に勇気を与えるね。僕も見習いたい!」
「どんどん見習っていいわよ!」
マイケルくんとミミさんはにこやかに笑い合った。うーん、美男美女でお似合いだ。そういえば、マイケルくんなんて勝手に読んでるけど、彼はいくつくらいなのだろうか。随分大人びて見えるが、私たちより年上、ってこともあるのかな? 外国の子は私たちよりも背が大きいし、その辺りのことがわからない。京ちゃんも気になってるだろうし、ふたりで聞いてみようかな?
「仲いいなあ、なんだか」
同じことを思ったらしい大輔くんがそう呟いた。私はにこりと笑い、大輔くんと腕を組む。
「ふふ! 私と大輔くんも仲良いでしょ?」
「えへへ、そうだよな!」
「私も湊海お姉ちゃんと仲良しよ!」
大輔くんは頬を緩めつつ、嬉しそうに頷いた。するとヒカリちゃんも対抗して、私の手を掴む。黒い海に行って以来、ヒカリちゃんは素直に甘えてくれるようになった。そんなヒカリちゃんが可愛くて仕方ない。大輔くんももちろん可愛いけど、ヒカリちゃんはやっぱり別格だ。
「はは、湊海はみんなと仲良いもんな」
「そうだね」
そんな私たちの様子を見て、飛鳥くんはにこやかに笑った。タケルくんも目を細めて頷いている。みんな仲良しなのが1番、だね!