きっかけ


「働くのは構いませんが、そんなことしていたら家に帰れなくなります」

「そんなこと、僕の知ったことじゃないね! とにかくお金が払えないんだったら、働いて返してもらうよ!」

 デジタマモンは私たちの都合など考えてくれないらしい。ドルしかダメなら店の扉にでも貼っとけっての。

「うーん……これは一度戻ってドルに変えてくるしかないか……? 食べちゃったもんは仕方ないし……」

「ええ!? 今からぁ?」

 飛鳥くんが腕組みをして考え込むと、大輔くんがげんなりとした様子でそう言った。ずっと働き続けるのは無理だし、そうするしかない――のか。そのときだった。



「僕が払いましょう」

「えっ?」

 私たちが振り向くと、そこには金髪の外国人な男の子が立っていた。


「うわあ、かっこいい!」

「あのー、貴方は……?」

「ハロー、みんな元気だった?」

 端正な顔立ちの男の子に、京ちゃんは頬を赤く染める。さすが面食い京ちゃんだ。ヒカリちゃんが男の子に話しかけたそのとき、後ろからミミさんが現れた。



『ミミさん!』

「ミミお姉さま、お久しぶりです!」

「ミミさん、どうしてここに?」

「アメリカとデジタルワールドを繋ぐゲートが開いてね、光子郎に寝てる所を叩き起こされちゃったのよ。でも、せっかくだからマイケルと遊びにきちゃった」

 私たちが質問すると、ミミさんはそう答えた。光子郎さん、時差は分かっているはずなのに、ミミさんを起こすとは――。流石である。でもせっかく開いたんだし、ミミさんもパルモンに会いたいだろうし、怒鳴られるの承知でやったのだろう。流石だ。
そして、このかっこいい男の子は、マイケルくんと言うらしい。


「彼はあたしの友達で、ベタモンっていうのよ」

「ベタモンです。よろしく」

 ミミさんの隣にいたパルモンは見慣れないデジモンをそう紹介してくれた。


「でもパルモン、こんなところにいていいの?」

「守っているエリアは?」

「光子郎に連絡してもらって、テントモンに代わってもらったのよ」

 パルモンは質問にそう答えた。テントモン、ご苦労様だね。


「ミミお姉さま。マイケルさんはどうしてデジタルワールドに?」

「彼はね? 私たちと同じ、選ばれし子どもなのよ」

『えっ、選ばれし子ども!?』

 私たちは思わず声をあげる。するとマイケルくんは、あるものを掲げた。


「太一さんたちのと同じデジヴァイス!」

 そう。それは前の私たちとデジヴァイスと、同じ形のものだった。



 お金は結局マイケルくんが払ってくれることになり、私たちは話をするため、一度席に戻った。


「マイケルは2001年に活躍したのよ。マイケルね、ずっとあたしたちに憧れてたんだって。照れちゃうわよねえ」

「アメリカにも、俺たちみたいな選ばれし子供がいたんだ……!」

「ということは、他の国にもいる可能性が……!」

 そういえば、大輔くんたちには他の選ばれし子どもたちのことを伝えてなかった。
 そもそも私が何で大輔くんに英語を習っているか。これは中学校からの勉強に備えて、という面もあるが、1番の目的は、世界中にいる選ばれし子どもと連絡をとるためだ。中にはマイケルくんのように日本語を話してくれる子もいるが、全員が全員日本語を話せるわけではない。となると、必要なのは世界標準語である英語だ。
 太一さんたちはどうも英語が苦手なようで、日本語以外の文章は私や光子郎さん、ミミさんに任されたのである。――ま、今はマイケルくんと一緒だし、説明するのは今度でいっか。



「マイケルさん、かっこいい!」

 大輔くんと伊織くんが真面目にかんがえる一方で、京ちゃんはマイケルくんにときめいていた。まあ、彼かっこいいからね。京ちゃんが頬を染めるのも仕方ないことだ。


「僕、1999年のニューヨークで、デジモン見ました。ゴリモンという成熟期デジモンでした」

「それって、ヴァンデモンが東京を侵略してきたときのことですよね?」

「そうです。思えば、それが選ばれし子供となったきっかけになった気がするです」

 タケルくんの問いに、マイケルくんはそう答えた。選ばれし子どもになるには、過去にデジモンを見ていること、というのが条件のひとつに当てはまる。3年前のあの事件は、選ばれし子どもを増やす要因のひとつになったみたいだ。


「きっかけ……。きっかけといえば、1999年……。僕はあのとき、飛行機に乗っていて……」

「俺はその頃、ビッグサイトに捕まってたんだ……!」

「俺は1999年に、湊海とラブラモンが戦ってるのを目の前で見たんだ。妹も一緒だったけど……」

「私は、1999年の夏のことには直接関わってないけど、2000年の春のディアボロモンの戦いのとき、メールを送ったわ!」

 大輔くんたちは、それぞれ初めてデジモンを見たときの様子を語った。そっか。飛鳥くんのきっかけは、私たちということになるのか。でも、それなら結月ちゃんも選ばれてもおかしくない。もしかしたら、そのうちひょっこりパートナーデジモンが現れるかもしれないね。




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