もう二度と


「テイルモン超進化! エンジェウーモン!」

「エンジェウーモン!」

 ヒカリちゃんが嬉しそうにエンジェウーモンを呼ぶ。完全体に進化できるなんて――!
私は目を大きく見開いた。やっぱりあれは、特別な光だったんだ。


「シルバーブレイン!」

「ホーンブレード!」

「ヘブンズチャーム!」

 襲いかかってきたエアドラモンに、ムースモンたちは攻撃をかます。 完全体のエンジェウーモンも一緒に必殺技を放ったため、エアドラモンはデータとなり、消滅していった。



「やった! エアドラモンを倒せた!」

 私たちは喜びの声をあげた。エンジェウーモンはゆっくりと、地上へ降りてくる。
エンジェウーモンは手から桃色の光を灯し、ハンギョモンに当てた。すると、ハンギョモンの腕に嵌っていたイービルスパイラルがぽろりと取れた。さすがエンジェウーモン――!
 ヒカリちゃんが笑顔でハンギョモンに近づいた、そのときだった。

「あ……」

 ハンギョモンはみるみるうちに、黒色の変な物体へと形を変えた。まるで幽霊のように、実体が掴めない。何だ……これは……?


「それが……あなたたちの本当の姿なの?」

 ヒカリちゃんが後ずさると、そのうちの一体が彼女の腕を掴んだ。


「な、なにするの!?」

「放せ! このっ……!」

 私はムースモンから飛び降り、そいつの手を離そうとしたが、私の力では全く動かない。くそっ……!


「ヒカリちゃんを放せ!」

 その様子を見て、タケルくんもこちらへ走り寄ってくる。


「我々があなたを呼んだのは、我々の花嫁に相応しいからだ……。あの新しい神に対抗するために……我々は、子孫を増やさねばならない……」

「 た、助けたのに!」

「きっもち悪い! ヒカリちゃんがあんたたちの花嫁だなんて! 馬鹿げてる!」

 そのとき、エンジェウーモンの攻撃が、ハンギョモンたちの足元へ飛んできた。
 冷たい目で見下ろすエンジェウーモンに恐れをなしたのか、ハンギョモンたちは海の中へ入っていく。


「選ばれし乙女よ……。花嫁となることを喜んでくれると思ったが、仕方ない……。我々は深き処にいる、 古き神の元へ還る。そして、時を待つ……」

 ハンギョモンはそう不気味な言葉を言い残して、海の彼方へ消えていった。
まさかヒカリちゃんは、この気持ち悪い奴らに呼ばれたのか――?
時を待つって、それは一体……。


「帰りたい……」

 考え込んでいると、ヒカリちゃんがぽつりと呟いた。


「帰ろう。一緒に」

 私はヒカリちゃんの手をぎゅっと握った。あんな奴らのことを考えたって仕方ない。今はこの温もりを喜ばないと……!


「そうそう。迎えに来たんだから」

「……うん」

 ヒカリちゃんはタケルくんに頷くと、私の方を見た。


「……湊海お姉ちゃん、すごく心配してくれたんだね」

「そりゃそうだよ。だから早くかえ……」

「……目。赤いよ?」

 私の言葉を遮り、ヒカリちゃんは私の頬に手を添えた。


「あ……」

 私は思わず声を漏らす。あんなに泣けばそりゃ目も赤くなる、か……。


「ち、違うの。これは……」

「ごめんね。湊海お姉ちゃん……」

 ヒカリちゃんはそう言うと、私のことを抱きしめた。ヒカリちゃんの無理が私には分かるように、私のごまかしも彼女には通用しない。
 私は小さく笑うと、ヒカリちゃんを抱き締め返した。


「……戻ってきたから、よし!」

 ――今度こそ、絶対に離さないんだから。



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