大好きな君に


 こうして私たちは、現実世界に戻っていった。


「アグモンは何とか取り戻すことができましたが、この先油断できません。テントモン、これからも情報を集めといてください」

『へい、任せてくれなはれ!』

 そうテントモンが光子郎さんに返事すると、ゲートが閉じた。
 Dターミナルの中にある、ふたつのデジメンタルをじっと見つめている大輔くんに、太一さんとヤマトさんが声をかける。


「大輔、お前のおかげだよ」

「え? お、俺?」

 大輔くんは突然のことに、目を大きく見開いた。


「そうだよ、お前だよ。よくぞ友情の紋章を受け継いでくれたな」

 ヤマトさんは大輔くんは頭をぐりぐりとしつつ、喜びを表現していた。何やら少々痛そうだが、大輔くんは頑丈だし、大丈夫か。


「なんかよくわかんねえけど、俺ってそんなにかっこよかった?」

 ヤマトさんに解放された大輔くんはニヤニヤとしながら、私たちに駆け寄ってくる。


「うん、すっごくかっこよかった!」

「にししし!」

 私がそう褒めると、大輔くんは嬉しそうに笑った。良かったね。


「でも、さっきね? 自分の力だけじゃなくて、太一やヤマトやみんなの力を感じたんだ! きっとそのおかげなんだって気がするよ……」

「ああ、何言ってんだよ!? そこはやっぱり俺だろ? 俺のおかげだろ!」

 そんなチビモンの純粋な言葉に、大輔くんはチビモンを肩をぶんぶんと掴みながら強制しようとする。おお……これは、かっこよくない。


「やっぱりこいつはまだまだかもな」

「え? なんで?」

 ヤマトさんのその発言に、大輔くんが首を傾げる。


「俺俺言ってるようじゃ、まだまだ子どもってこと」

「確かにそうかもね」

 ヒカリちゃんはくすくすと笑い、ヤマトさんに賛同した。


「そんなあ……」

 がっくりと肩を落とした大輔くんの様子を見て、みんなは声をあげて笑った。


「湊海ちゃん、湊海ちゃんは違うよね?」

 大輔くんは必死の形相で、私にしがみついてきた。おお、これは怖い。


「うーん……なるほど。大輔くんがいつもよりかっこよかったのは、みんなの力のおかげなんだね」

「湊海ちゃんんんん!」

 私がこくりこくりと頷きながらそう言うと、大輔くんは滝の涙を流した。私はふっと笑い、大輔くんの涙を手で拭う。


「ふふ、じょーだん。私は本当にかっこよかったと思うよ?」

「湊海ちゃんんんんんんん!!!!」

 大輔くんは勢いよく、私に抱きついてきた。ええ? さっき恥ずかしがってたのはどこの誰かね? んん?


「おいおい、湊海。それ以上大輔を骨抜きにしてどうする?」

「あんまり甘やかすなよ?」

 太一さんとヤマトさんは半笑いで、私たちの方を見た。


「はーい」

 私は大輔くんの頭を撫でつつ、適当に返事をした。
どうもみんな、大輔くんに厳しいようだから、代わりに私が甘くしちゃおっと。いじめるのも私だけ、甘やかすのも私だけ――なんて、ちょっと欲張りさんかな。

 それはともかく、今日はよく頑張ったね、大輔くん。私はにこりと微笑んだ。お疲れ様。いつだって私は、貴方の味方だから。


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